【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・小売り編③ー 専門店について知っておこう

  • 2020年09月25日更新
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小売り編の第3回目は専門店について見ていきます。ファッション業界における専門店とは、服及び服飾雑貨の販売に特化した小売業のことです。個人オーナーの運営する個店から、地域に根差したリージョナルチェーン、ナショナルチェーン、セレクトショップやSPA(製造小売業)まで、その規模は大小さまざまで、百貨店や量販店など淘汰(とうた)の進んだ総合小売業に比べ、企業数が非常に多いのが特徴です。

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【専門店の市場規模は?】衣料消費市場全体の約6割を占める

Q.ファッション市場で専門店はどのくらいのシェアがあるのですか?

A.日本の衣料品消費市場の規模は10兆円弱で、このうち専門店の売り上げ規模は6割近くに上ります。

繊研新聞社は毎年、衣料品消費市場の規模を調査しています。直近の調査結果では18年の市場規模が約9兆8000億円ありました。このうち、専門店が占める売り上げ規模は5兆5800億円あり、全体の57%を占めました。

グラフ①は衣料品消費市場の規模を専門店と専門店以外(百貨店、量販店、通信販売の合計)で分け、それぞれの推移を過去10年で見たものです。09~12年までは専門店以外の小売業が専門店の売上高を上回っていましたが、13年以降は専門店が上回り、18年までじりじりとシェアを拡大してきました。

専門店の市場規模が拡大した理由は、いくつかあります。まず、ここ数年は鈍化していますが、日本ではSCの開業が長年続き、出店立地が増えたことで、専門店が店舗数を増やしたからです。また、90年以降にSPAと呼ばれる自社ブランドの商品を生産、販売する業態が台頭し、手ごろな価格で安定した品質の商品やトレンドを適度に取り入れた商品を売る業態として市場に定着しました。

同時期にセレクトショップと呼ばれる仕入れとオリジナル商品の組み合わせで感度の高い客層に向けたファッションを売る専門店も増え、市場規模を拡大していきました。これ以外にも仕事で着るスーツの販売や子供服など特定のニーズに特化した専門店も台頭し、結果として百貨店や量販店など総合小売業のシェアを奪い、専門店が全体として成長したわけです。

【主な専門店の顔ぶれは?】カジュアル分野に大手がひしめく

Q.専門店の大手にはどんな企業があるのですか?

A.カジュアルではユニクロが売上高8000億円超え、しまむらが5000億円超えで2強になっています。

表は、19年に繊研新聞社が実施した「18年度専門店ランキング調査」の売上高上位20社を抜き出したものですが、ユニクロとしまむらが突出した存在感を誇っています。

ユニクロはSPA手法で品質の安定したカジュアルウェアを手ごろな価格で販売することで成長し、一方のしまむらは仕入れを主軸にしていますが、トレンドを取り入れた商品を安く売ることで若年層から大人客までを取り込み、規模を拡大しました。

4位のアダストリアは「グローバルワーク」「ローリーズファーム」といったレディスの専門店を運営する大手企業です。5位のジーユーはユニクロと同じファーストリテイリング傘下のカジュアルウェアを販売する企業ですが、ユニクロよりも安い価格帯で急成長を遂げました。

カジュアル以外では青山商事とAOKIホールディングスがそれぞれ1000億円を超える規模ですが、2社はスーツ専門店です。ビジネス需要のスーツを郊外立地の店舗で大量販売することで成長し、その後は都心にも進出、ツープライススーツなど新業態も開発し、大人のビジネスマンだけでなく就職活動用のスーツの販売で学生の需要も捉え、規模を拡大しました。

このほか上位陣には価格帯がカジュアル専門店より高いユナイテッドアローズやベイクルーズグループなどセレクトショップ、子供服で西松屋チェーン、赤ちゃん本舗、作業服からカジュアル市場にも進出しつつあるワークマンなどがあります。

【大手専門店の市場シェアは?】3社が専門店全体の3割

Q.大手企業は専門店全体の中でどれくらいのシェアを占めるのですか?

A.個別の企業で見ると、ユニクロが専門店全体に占めるシェアは15%に達しており、次いでしまむらが10%を占めます。急成長しているジーユーも4%のシェアとなっており、ファストリ傘下の2社としまむらを合わせて29%を占める計算です。

10年前の09年にはこの3社の合計シェア23%でしたから、市場規模全体が伸び悩んでいる中でも、カジュアル大手の業績が堅調だったことがわかります。3社とは別にレディス業態を主力とするアダストリアのシェアもこの10年で2%から4%まで上昇しました。

一方、業態別で見ると、スーツ専門店は09年の9%から18年には7%とシェアが低下しています。これはドレスコードのカジュアル化も関係しており、ユニクロやジーユーがオフィス需要に対応して作ったジャケットやパンツが市場で受け入れられるようになったことも遠因です。

また、ジーンズを主体とするカジュアル専門店も売上高上位のカジュアル企業の市場での寡占化に伴い、シェアがこの10年で半減しています。

このほか、この10年でシェアを拡大した業態としては、セレクトショップが9%から13%になっています。これは同等の価格帯で服を売る百貨店内のアパレルブランドのシェアを奪ったことに加え、セレクトショップが00年代以降、都心のファッションビルや開業数の増えた郊外のSC向けのストア業態も開発し、出店立地を拡大、店舗数を増やしていったことが要因として大きいと考えられます。

【専門店は今後どうなる?】コロナ禍を境にビジネス変化

Q.今後、専門店の市場でのシェアや売り上げ規模はどのように変化していきますか?

A.これまで、全体としては規模の拡大が続きましたが、19年10月の消費増税、19~20年の暖冬に加え、20年に起こった新型コロナウイルスの感染症拡大の影響で市場規模は縮小に向かうと見られます。

大手専門店と主だった業態の過去10年間の売上高推移を見ると、ユニクロがこの10年で6割程度売上高を伸ばし、同じファストリ傘下のジーユーもこの10年で2000億円を上回るまでに急成長しました。アダストリアも10年で規模が倍増し、業種としてはセレクトショップが2倍近く成長しました。

一方、スーツ専門店はスーツ需要の減退で成長性が鈍化し、カジュアル専門店も規模が縮小、しまむらも直近業績が低迷しています。業種や個別の企業ごとの優勝劣敗の構図が鮮明になっていますが、これまで各社の勝敗を分けたのは、消費者のニーズを捉えた商品やサービスの提案の精度でした。

それがここにきて、別の要素が各社の成長性を左右するようになっています。19年10月の消費増税の反動で買い控えが起き、ここ数年の暖冬で収益の多くを担う冬物商戦は不発続きでした。各社とも価格政策や秋冬偏重のMDの見直しに乗り出した、そのタイミングでコロナ禍が起きたのです。4、5月は専門店各社の実店舗の多くが休業を余儀なくされ、売上高は大きく減りました。休業期間中をECでしのぎ、6月に入ってからは店舗営業の再開も本格化しましたが、事態は終息の兆しが見られず、20年に関しては負け組の専門店だけでなく、これまで勝ち組だった専門店も業績の落ち込みは避けられそうにありません。

(連載終わり/繊研新聞20年6月12日付より)

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