【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・小売り編②ー GMS、ECについて知ろう

  • 2020年09月18日更新
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
S624x416 shutterstock 580499569  1

小売り編の2回目は、GMS(総合小売業)とECについて見ていきます。GMSは、衣食住の生活全般にまつわる商品を扱う総合小売業として成長を迎えましたが、競合業態の台頭に伴って苦戦を強いられるようになり、生き残りに向け、様々な改革が進んでいます。一方のECは、00年代に入ってから拡大し始め、現在ではファッション分野でも主要販路の一つにまで成長しています。

【関連記事】【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・小売り編①ー 百貨店、ショッピングセンターについて知ろう​

【EC】実店舗との併用が加速 リアルの強みをデジタルで

Q.日本でのECの市場規模はどれくらいですか?

A.約1兆1000億円です。繊研新聞社が19年9月に実施した18年度ファッションEC売上高調査では、消費者向けEC市場規模は前年比15.8%増となりました。ここ数年、EC市場規模は2ケタ成長を持続しています。国内ファッション市場のなかでネット販売が占めるEC比率は11.3%となり、ファッション商品の約十分の一がECで購入されていることになります。ただ、ECで商品を知って実店舗で購入しているというケースも多いため、ECが関与している売上高はもっと大きいと考えられています。

Q.服のECだと、まず「ゾゾタウン」を思い浮かべますが、最近はゾゾ以外のモールや、ブランド単独のECサイトも見かけるようになりました。

A.EC拡大に伴い、自社運営も増えています。

ECの発達の歴史をたどると、米アマゾンがサービスを開始したのが95年、アマゾンジャパンが00年。「楽天市場」のサービス開始は97年で、04年にはスタートトゥデイ(現ゾゾ)がゾゾタウンをスタートしました。

00年代、ファッションブランドはこうした圧倒的な集客力があるモール型ECサイトを活用して、自社のブランドの認知度や売り上げを高めてきました。企業のなかにEC担当の部署が誕生したのもこのころで、「ネットで服が売れるわけがない」といった否定的な意見もあった時代ですが、こうした担当者がECで売るための在庫を確保し、少しずつ販売規模は拡大していきました。

13年ころからは、いわゆる企業やブランド独自の自社(直営)ECが目立ちはじめます。ECで売れることがわかったので、次は自分たちの世界を表現したり、顧客と直接コミュニケーションを取りながら、収益率を高めようというわけです。実店舗がオーバーストアとなり、新チャネルとしてECへの期待も高まりました。

Q.O2O(ネットと店舗の相互送客)やオムニチャネル、OMO(オンラインとオフラインの融合)といった言葉をよく耳にします。

A.ECと実店舗の相互送客や買い物体験の融合が課題となってきているからです。自社ECが増えだすと、O2Oが注目され、店と相互送客することが目標になりました。そして18年ころから現在にかけては、消費者が最適な時間・場所・人から望む商品を購買できるように、あらゆるチャネルで購買しやすく接点経路をつなげるオムニチャネルや、OMOに注力する企業が増えています。

すでに消費者は、スマートフォン片手にリアル、デジタルを意識せずに買い回っています。その購買行動をデータ化して最適なコミュニケーションを重ねることで、ブラ壱八のファンを育て、プロパー消化率を高め、マルチチャネルで売り上げを伸ばすことが求められています。ECという枠を飛び越えてのデジタル施策の構築が必要となってきています。

Q.新型コロナウイルスの感染拡大によって実店舗が臨時休業するなかで、ECは伸びたと聞きます。

A.繊研新聞社がファッション専門店に聞いた営業自粛などの影響についての緊急アンケート調査では、全体の96%が「店頭売り上げが減少した」一方で、ECでの販売は80%以上が「増えた」と回答しました。「50%以上増加した」ところも多く、来店できない客のEC利用は間違いなく増えています。これまでECで販売していなかったデザイナーブランドなどがECで販売を開始する例も増えています。

これまでもオムニチャネル化を進めて顧客ロイヤルティーを高めてきた企業・ブランドはECの売り上げを大きく伸ばしています。一方で、新しくECサイトを立ち上げたものの、在庫の確保が滞ったり、物流体制を構築できておらず、かなりの配送日数がかかっているところもあり、逆に客との信頼関係を損ねるケースも発生しています。

全体的にはファッションECだけにかかわらずすべての業種でECが急拡大しています。コロナ禍で消費者心理は①生活必需品最優先②価格メリットがあるか③感染リスクを減らすために家まで届けてくれるか――といったことを意識するようになりましたが、ECはどの点においても優位性があるからです。

Q.このままECが拡大すれば、実店舗での対面販売はどうなるのでしょうか?

A.ECがさらに伸びても対面販売がなくなることはないでしょう。すでに新型コロナウイルスが終息に向かっている中国では、店舗の営業を再開して客足が戻っているようです。一方で、ECの売り上げやその勢いは維持しているという話もあります。今後ますます、実店舗とECの併用が加速すると考えられます。

ECは24時間販売できることや、認知拡大やブランディング、データ分析、実店舗は顧客体験や信頼関係を深めたりすることでそれぞれメリットがあります。役割分担して多面的に客とのつながりを持つことで、相乗効果を発揮していくことになるでしょう。

現在休業中の実店舗のデジタル化も進んでいます。インスタグラムでライブ配信して商品情報を発信したり、ウェブカメラで接客したり、ライブコマースで販売しています。つまり、これまでリアルの場で強みとされてきた販売スタッフの能力をデジタルでも発揮できるチャンスというわけです。

【GMS】衣食住揃う生活インフラ 厳しい構造改革進む

Q.そもそもGMSとは何なのでしょうか?

A.ゼネラル・マーチャンダイズ・ストアの略で、衣食住のすべてを扱う総合小売業のことです。

食料品のスーパーマーケットと区別するため、総合スーパーと呼ばれることもあります。高度成長期から多店舗化、日本の流通の近代化を強力に進めました。消費者へ生活必需品を安価に、すべてが揃うワンストップショッピングの利便性と合わせて提供することで業態として確立、市場に定着しました。

生活に必要な物を扱っていますから、新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、百貨店や駅ビルなどが休業し始めた4月以降も、多くが営業を続けていました。大型SCでも専門店ゾーンは休業になりましたが、核店舗のGMSは地域の生活インフラとして営業したのです。

強みの一つである低価格での商品提供は、本部で一括仕入れ、各店舗に配分するチェーンオペレーションによる効率的な運営によって実現しています。また接客をしないセルフ販売を基本としており、これも価格抑制につながっています。衣食住にわたる商品を扱う総合型の品揃えを生かし、粗利益率の低い食料品の低価格での大量販売を粗利益率の高い衣料品で支えるという「粗利ミックス」の収益モデルもGMSの特徴です。

Q.GMSの事業は厳しいと聞きます。

A.消費増税の影響のほか、大型台風や極端な暖冬のため、20年2月期決算も厳しい結果になりました。

GMSの不振は長期にわたります。イオン、セブン&アイ・ホールディングスといった日本を代表する流通グループの祖業であり、現在も中核事業の一つですが、今ではディベロッパーやドラッグストア、コンビニエンスストアなどそれぞれグループで、収益の柱は別の事業に移っています。GMSは大幅な事業改革を迫られています。業界3位のユニーはドン・キホーテのパン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングスの傘下に入っています。

GMSの厳しさは90年代に顕在化しました。これまでに経営破綻したところもあります。かつてGMSという業態の確立に寄与し、業界をリードしたダイエーはイオングループ傘下となり、食料品に事業領域を絞っています。西友もGMS大手の一角を占めていましたが、ウォルマート傘下で食品スーパーとしての道を歩むようになっています。

Q.大幅な事業改革が求められるようになった要因は何でしょうか?

A.衣料品、住居関連品といった非食料品分野の不振です。

この分野は1990年代にカテゴリーキラーと呼ばれる大型の専門店が台頭、以降、低価格ゾーンの消費の中心はそちらに移っていきました。食料品の比率が高い総合型であるがゆえ、カテゴリーごとに特化した専門店との競争に不利な面があったなどと指摘されています。

イオンリテールのほかイオン九州、イオン北海道といったイオングループのGMSの衣料品売り上げは合計すると年間5000億円とされています。国内3位の規模ですから、その存在感はもちろん小さくはありません。しかし、GMS企業の多くが加盟する日本チェーンストア協会の統計ではバブル崩壊以降、衣料品は毎年のように既存店売り上げを落としてきました。

非食料品分野の苦戦により、粗利益率の異なる商品の組み合わせで収益を上げるもともとの仕組みが成り立ちにくくなりました。GMSの食料品売り場はどこよりも面積があり、その品揃えに競争力はあるのですが、食品による利益だけで、全体を支え続けることができなくなってきています。食品分野での競合はスーパーマーケットばかりでなく、コンビニに加え、ドラッグストアも参入しており、激しさを増すばかりです。また、ECも台頭しているほか、少子高齢化、人口減による影響も無視できません。

Q.どんな改革を進めていますか?

A.GMS改革の焦点は、要因が非食料品の苦戦にあるわけですから、衣料品などをどうするかということになります。

多くの企業で収益に見合うように売り場を圧縮する動きが続いています。そのためかつての3000平方メートルといった巨大な売り場はほとんど見なくなりましたが、立て直すポイントは食料品売り場までは来ている消費者をフロアの異なる衣料品売り場にいかに呼び込むかです。

GMSの衣料品売り場は団塊の世代とともに成長したという経過があります。しかしその後、専門店が台頭したことで以降の世代を捉えきれずにきました。食料品売り場までは多様で大量の消費者が来ているのに、衣料品売り場に来てくれる客層は限られているわけです。そこで見せ方をより若い層に適合するように変えようとしています。

イオンリテールは、非食料品部門をカテゴリーごとに分社する計画で、衣料品などの事業構造や運営体制を専門店と同様にする構えです。売り場も「iC」「キッズリパブリック」などの名称をつけ専門大店型に切り替えようとしています。ユニーは価格競争力を高めるとともに、扱いカテゴリーを拡大するなどの新フォーマットを準備中です。中堅ですが平和堂は、全売り場を大型SCのテナントのようなショップ型にする実験を始めました。

新型コロナに伴う衣料品全般の買い控えの中、足元は厳しい状況にありますが、改革は着実に進める構えです。

(繊研新聞20年5月22日付より)

    関連する記事

    この記事に関連するキーワード

    話題のキーワードキーワード一覧

    月間ランキング月間アクセスランキング

    週間ランキング週間アクセスランキング