【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・小売り編①ー 百貨店、ショッピングセンターについて知ろう

  • 2020年09月14日更新
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今回からは小売り編です。第1回目は百貨店とSCについて見ていきます。

百貨店は、衣食住それぞれの分野で、かつては中~高級品を売る総合小売業としてファッション市場でも大きな存在でしたが、平成以降は、地位の低下が顕著です。

一方のSCは都心から郊外まで全国に3000を超える数があり、日用品から中~高級分野まで消費者の幅広いニーズを満たす存在となっています。

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【百貨店】新型コロナへ短期、長期の備え

Q.新型コロナウイルスの感染拡大で臨時休業や営業時間短縮が相次いでいます。

A.日本百貨店協会が発表した全国百貨店(74社、205店)の3月売上高は、前年同月比33.4%減で6カ月連続のマイナスで、過去最大の減少率となりました。時短営業や臨時休業により、入店客が大幅に落ち込んだことが響きました。卒業・入学のオケージョン需要が低迷し、外出自粛をはじめ、在宅勤務に伴う通勤客の減少で、衣料品が4割減となり、服飾雑貨も2ケタ減を強いられました。この間、堅調だった化粧品は4割減でした。同様に、インバウンド(訪日外国人)需要は中国政府が海外団体旅行を禁止した1月27日以降、大きく落ち込んでいます。免税売上高は3月に86%減少し、買い上げ客数が9割減でした。

4月は緊急事態宣言に伴う臨時休業の拡大で、客数、売り上げの減少幅が広がりました。三越伊勢丹グループの国内百貨店売上高は前年同月比8割減となり、「これまで経験したことがない落ち込み」(都内百貨店)と深刻さを増しています。

Q.新型コロナの終息が不透明な中、事業の継続はどうなるのですか?

A.新型コロナの影響による企業リスクに対応して投資・経費の圧縮や運転資金の確保に取り組んでいます。大事なのは当面の資金繰りなど短期と終息後の備えに向けた長期の両面で対策を立てることです。

大手百貨店は「当面の事業継続に必要な資金は十分確保されている」(三越伊勢丹ホールディングス)、「当面は資金繰りに大きな影響はない」(J・フロントリテイリング、高島屋)と明らかにしています。三越伊勢丹HDや高島屋は19年度末までにコマーシャルペーパー(CP)発行で300億円を調達して現預金を積み上げており、引き続き取引銀行との間でコミットメントライン(融資枠)の確保、CP・社債の追加発行による機動的な資金調達に着手します。長期化した場合の対応として、設備投資の削減や追加の経費削減に取り組んでいく考えです。

ただ新型コロナが終息しても消費の冷え込みが続くことが想定されています。想定を超えた経営環境の変化はサプライチェーンを含めた淘汰(とうた)が避けられません。〝コロナ後〟の環境変化を見越した新たな経営戦略の策定が迫られています。コロナ後が起点となり、消費構造や働き方が大きく変わることが予想されます。経営トップは「デジタルを使った消費行動、コミュニケーションや家の中での娯楽など新しい消費ニーズに応えられるようにしたい」(村田善郎高島屋社長)、「新しい消費がどう生まれるのか注視していく」(好本達也大丸松坂屋百貨店社長)と話しています。

Q.百貨店の今後の成長はあるのですか?

A.新型コロナの終息が前提ですが、百貨店の最大のミッションは商品、サービス、環境など実店舗の魅力を最大化して顧客に満足してもらうことです。

その一つがデジタルの活用です。顧客接点でICT(情報通信技術)を使って、店頭でもECでもシームレスな顧客体験を提供することです。百貨店は人による接客サービスに優位性がありました。しかし、そのビジネスモデルは旧態依然で、豊富な情報や知識を持つ今の顧客の変化に対応できていません。サービス水準を維持、向上させるには、ITの力で顧客・商品情報を一元化することが必要です。

すでに一部の店舗で、百貨店の強みである販売員による接客と顧客情報を蓄積したデジタルインフラを融合させることで、一人ひとりに合わせたパーソナルな顧客体験の提供に着手しています。専門性の高い販売員によるコンサルティング接客などがスマートフォンから簡単に事前予約できるようになっています。

もっとも、百貨店に依存しているだけで生き残るのは難しいことに変わりありません。不動産事業を拡充するのもその一つです。美・健・癒やしなど顧客の暮らしをより豊かにする事業に新規・成長領域が広がっています。

リアル店舗の強みとデジタルサービスを融合させた店作りを目指す(伊勢丹新宿本店2階婦人服)

【SC】競合激化で売り上げ、開業数ともに鈍化

Q.ショッピングセンター(SC)と言えば、イオンモールやららぽーとが思い浮かびます。ルミネやパルコもSCですか?

A.SCとは、一つの建物に複数の店舗が揃った商業施設の一種で、施設を開発・運営する業者(ディベロッパー)が取引先店舗(テナント)と不動産賃貸契約を結ぶ業態を指します。
ただし、飲食店だけのビルやクリニックモールはSCではありません。業界団体の日本ショッピングセンター協会はSCの定義を商品を販売する小売店がテナントとして11店以上入り、その合計店舗面積が1500平方メートル以上あることなどとしています。イオンモールなどはもちろん、ルミネやパルコ、SHIBUYA109などもSCです。地下街も要件を満たせば、SCに分類されます。

Q.百貨店やGMS(総合小売業)、ホームセンターとの違いは何ですか?

A.この3業態は基本的に自社で販売を行う小売業で、不動産賃貸業のSCとは取引先との契約形態を含めて、異なります。

ただし、SCとこれら3業態との境目はだんだんとなくなっています。ニトリ、ビックカメラなどの大型専門店をテナントとして入れる百貨店も増えてきました。イオンやイトーヨーカ堂などGMSでもSCの基準を満たす施設が多くあります。ホームセンターも同様です。ここ数年は百貨店がSCに転換したり、ホームセンターがディベロッパーとしてSCを開発する事例が目立ってきました。SCはテナントから一定の家賃収入が見込め、自社のスタッフを販売に割かなければならない小売業と比べて収益性が高いと多くの企業が考えているのが大きな理由です。

Q.業界は順調に推移していますか?

A.必ずしも、そうとは言い切れません。

SC協会によると、昨年は46施設が開業し、前年開業数の37施設を上回りました。年間開業数が前年超えとなったのは15年以来です。昨年は東京・渋谷の渋谷スクランブルスクエアや建て替え工事を終えた渋谷パルコ、東京・南町田のグランベリーパークなど話題の施設も開業しました。一方で、閉鎖したり、業態転換などによってSCの基準を満たさなくなった施設は昨年末時点の速報値で47施設ありました。この結果、SCの総数は3219施設となり、前年の総数(3220施設)を初めて下回りました。総売上高は31兆9694億円(消費税抜き)で、前年比0.8%増でした。これは昨年9月に消費増税前の駆け込み需要があったのが大きな理由です。前年実績と比較可能な既存SCの月別売上高は消費増税が始まった10月からマイナスが続いています。開業数も今年は40施設前後の見通しで、鈍化します。

Q.これらの要因は何ですか?

A.大きな流れで言えば、競争の激化です。

鈍化傾向とはいえ、SC数がこれだけ増えれば、施設間の競合が強まり、「勝ち組」と「負け組」の差が開いてきます。ECの浸透の影響も大きいです。他と同じようなテナントを入れる施設も依然多く、消費者にとって魅力が薄れてきたのも理由です。

ただし、地域の人たちのニーズをくみ取り、地域と一体となって運営している施設や特徴を出している施設は健闘しています。エンターテインメント機能を充実するなど買い物以外の来館目的を打ち出した施設も順調です。昨年に開業した施設では、エンタメ機能を備えながら、個性の強いファッション店を多く導入した渋谷パルコや公園などと一体化し、お客が「楽しく過ごす」機能も充実したグランベリーパークが代表例。この流れは今後も続くでしょう。

Q.新型コロナウイルスの影響で多くのSCが4月から臨時休館しています。

A.SC協会調査による3月の既存SC売上高は前年同月比28%減とかつてない落ち込みでした。

感染防止のため、多くが営業時間を短縮し、集客につながるイベントを控えたためです。政府の緊急事態宣言によって、4月8日以降、大半のSCが食品スーパーなど日常生活に必要な一部テナントを除いて休館しており、影響は甚大です。休館によって、テナントは苦しんでいます。そのため、多くのディベロッパーが賃料を減額・免除するなどの措置を実施、あるいは検討しています。

「買い物」だけでなく「過ごす」機能も充実(東京・南町田のグランベリーパーク)

(繊研新聞20年5月8日付より)

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