【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・アパレル編③ー デザイナー、バッグ、シューズについて知ろう

  • 2020年09月04日更新
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アパレル編の3回目は、デザイナービジネスとシューズ・バッグ業界の今に着目します。

デザイナーの仕事は、おしゃれでセンスのいい商品を作るだけでなく、時代の気分や課題にいち早く反応して、ファッションビジネスの次のあり方を提示することでもあります。社会の変化を敏感に感じ取る感覚が必要とされます。

デザイナービジネスのコーナーでは、今注目されている事例、新たな視点をひも解きます。ウェア以上に幅広い層が対象となるシューズ・バッグ業界の現状や課題も紹介します。

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◆デザイナービジネス

サステイナブルが標準装備に 焦点はヒューマニティー

Q.デザイナービジネスにおいて、今最も注目されていることは?

A.サステイナブル(持続可能)な取り組みです。もはや持続可能な社会を考えることは、デザイナーブランドにとって標準装備になっています。当初は、再生素材やオーガニックコットンなど、テキスタイルを通して持続可能なファッションビジネスのあり方を探るブランドが多かったのですが、近年はもっと視野の広い取り組みが増えています。

昨年9月の20年春夏レディスコレクション以降、一気に広がったのは、ファッションショーの設営に使われる建築資材の再利用です。「ルイ・ヴィトン」の特設会場は、木材でシンプルに作られるようになり、舞台装飾は再利用できるものが使われるようになりました。20年春夏は繰り返し使えるLED大画面からオリジナル動画を流し、20~21年秋冬はさまざまな地域・時代の衣装をまとった200人を舞台に並べて、ヒストリカルなイメージを表現した。サステイナブルというハードルをクリアしながら、アイデア次第でこれまでにない表現が生まれるようになっています。

「ルイ・ヴィトン」20~21年秋冬コレクション(写真は大原広和)

Q.ほかにもサステイナブルな取り組みはありますか?

A.「グッチ」の親会社のケリングは、長年にわたりサステイナブル活動を積極的に行っており、環境負担減の目標値を具体的に設置しています。その一環で、全ての事業でカーボンニュートラル活動を開始しており、グッチはショーで使う二酸化炭素量の完全オフセットを行うためにミラノ市内では植樹を行っています。

20~21年秋冬シーズンは、招待状のデジタル化も目立ちました。ニューヨークやロンドンはすでに広がっていましたが、伝統を重んじてきたミラノやパリでもEインビテーションが増えました。

以前は招待状も重要な表現の一つでしたが、その方法も進化していきそうです。

Q.20~21年秋冬コレクションで新たに注目されたことは?

A.ヒューマニティーや人間賛歌がキーワードになりました。ECで商品を販売し、SNSでブランドストーリーを発信するなどデジタル化が進むなか、ここ数年「デザイナーブランドの価値とは何か」が問われるようになっています。そこで改めて、人の力にスポットが当てられました。

「ドルチェ&ガッバーナ」は、ショー会場の入り口にニットや刺繍の職人を迎えて実演を行い、コレクションを支える多くの人々を主役に押し上げました。「ロエベ」は、陶芸家とともに手掛けたアートピースをコレクションに加えて、作品がもたらす迫力を新作と融合させた。着やすい服やおしゃれな服とは一線を画する存在感。それがデザイナーブランドには必要だという意志を感じさせるショーでした。

クリエイションを重視するデザイナーブランドならではの価値を見いださなければ、ブランドの存在意義は維持できない。他にはない魅力を引き出すために、ブランドの本質を掘り下げる作業が今、重要になっています。

◆レディスバッグ

市場の気分を色濃く表す

レディスのバッグは、都会の電車の中などで少し興味を持って見れば、わかりやすい分野です。人気のブランド、形や大きさ、材質、また価格帯にさえその時々のトレンドが反映され、ファッションビジネスに重要な女性たちの気分が表れていると言えます。

Q.どんなバッグがありますか?

A.まず、よく知られている「ルイ・ヴィトン」「グッチ」といったラグジュアリーブランドのバッグが、バッグといえばの代表でしょう。〝イットバッグ〟と言って、それぞれブランドを代表する人気モデルがあり、覚えておくといいのでは。もっともこのイットバッグにも流行の入れ替わりがあります。

高価でなかなか手の届かないこうしたバッグに対して、より身近な「フルラ」「コーチ」などモデレートゾーンと呼んでいるブランドバッグもあります。全国の百貨店、大きな商業施設などに店があり、働く女性や若い層に支持が厚い。がんばって自分のお給料で買える価格帯です。

新進デザイナーによるバッグブランドは、そのデザインの新しさ、持っている人が少ない価値でファッションフォワードに注目されます。また、ナチュラル、クラフトを売りにする個性的なブランド、ナイロン製やキャンバス地の比較的低価格でたくさん売られているバッグがあります。

手の届くブランドとして人気の「コーチ」(20年春夏)

Q.最近、流行しているタイプはありますか?

A.おしゃれアイテムとしては、本体は小さめの、チェーンのストラップなどのショルダーバッグがヒットしています。ただ、これは仕事などで荷物が多ければバッグ〝2個持ち〟になるため、1個ですむ実用的なビッグバッグが見直されているようです。

バッグは日本では一つのブランドが爆発的にヒットするケースも目立ちます。近年は、ジャカードやプリントの連続柄のバッグ、広い開け口のリーズナブル価格のリュックなどがその典型と言えるでしょう。その意味では、手ごろな価格で使いやすいものが一番、ということかもしれません。バッグをステータスの象徴とする意識は薄れているようです。

◆シューズ

1万円以下の製造小売業態が成長

Q.靴の産業の特徴はありますか?

A.国内の市場規模は1兆3000億円と言われています。

ただ、この数年、消費者の生活スタイルが大きく変化し、大手スポーツブランドのスニーカーの販売が伸び、その他のメーカーやブランドによる靴の市場規模は年々縮小しています。

国内では浅草を中心に革靴が、神戸を中心に合成皮革の靴が生産されています。しかし、日本で販売される靴の大半は、中国やベトナムなど人件費の安いアジアからの輸入品です。19年の国内生産は、革靴が合計1148万2459足(日本皮革産業連合会調べ)、合成皮革靴が1万3098足(日本ケミカルシューズ工業組合調べ)。輸入靴は合計6億5277万6403足(財務省・貿易統計)です。日本製のシェアは2%に満たないことが分かります。

Q.市場動向や課題はありますか?

A.洋服同様に消費の二極化が進み、百貨店の靴売り場の売り上げ規模が縮小し続けています。

ラグジュアリーブランドを中心とした高級靴の市場は拡大しましたが、都市部の店に限った傾向です。特に婦人靴は、主力となる1万円台半ばから後半の国内ブランドの革製パンプスの消費が低迷し、商品を供給する大手婦人靴卸が淘汰(とうた)されました。繊研新聞の企業調査を振り返ると、この10年で300億円以上が消滅しました。伴って、浅草のメーカーは廃業が相次ぎ、産地内でサプライチェーンの維持が危ぶまれています。

Q.危機の原因は何でしょうか?

A.ファッションビルや郊外SCに、低価格でトレンドが反映された婦人靴を扱う製造小売業態が増え、1万円以下で消費者が納得のできる品質の製品が揃うようになったことです。業績を伸ばす一部の企業は、神戸のメーカーと協業して履き心地を高め、若い世代に限らず、50代や60代といった幅広い世代の購入に結びつけています。

高級スニーカーの消費が伸びている阪急うめだ本店

(繊研新聞20年4月10日付より)

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