【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・アパレル編②ー 総合アパレルについて知ろう

  • 2020年09月02日更新
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今回は、衣料品の生産、販売を行う総合アパレルメーカーについて紹介します。春夏、秋冬のシーズンごとに服をデザインして、適正な生産量や店頭投入の時期を見極めながら小売りに供給したり、自社の店で販売する業態がアパレルメーカーです。総合アパレルメーカーは主に百貨店やSC、量販店など大型商業施設向けを主力としています。

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◆市場規模は9兆円半ば

Q.国内のアパレル市場の規模や現状は?

A.近年の国内アパレル消費市場規模は9兆円台半ばで推移しています。

08年の金融危機、リーマンショックからは回復傾向にあるものの、91年当時の約15兆円と比べれば、3分の2程度に縮小しました。一方、同期間の国内市場への供給量は約20億点から37億点へとほぼ倍増し、衣料品の平均単価は半分以下に下がっています。

生産地は中国、東南アジアやバングラデシュなどに広がり、輸入浸透率は90年の約50%から、今では97%を超える水準となっています。国内生産への回帰も一部で見られますが、労働力確保は容易ではなく、〝国産〟とはいえ、外国人技能実習生が頼りとなっている国内の縫製工場が少なくありません。

一方で店頭販売におけるプロパー消化率は低下傾向にあり、今では50%にも満たないことも珍しくありません。サブスクリプションや、オフプライスストアといった2次流通の新しいビジネスに乗り出す企業も増加しています。

既存の実店舗をベースにした、ビジネスモデルだけでは市場拡大は見込めないため、販路はECへのシフトが進んでいます。繊研新聞社の調査では、18年のファッション商品の売上高に占めるECの割合は11.3%に上昇し、売上高合計は1兆円を超えました。これまでは、アパレルのECはゾゾタウンやアマゾン、楽天市場などECモールへの出店が中心でした。しかし、最近では各アパレルメーカーとも自社サイトを強化し、ECモールと併用する動きも盛んになっています。これは実店舗とECを融合する〝オムニチャネル〟という戦略で、ECや店頭、SNSをつなぎ、いつでもどこでも商品を注文し、受け取れるようにするものです。

オンワードグループの中国・大連工場のデジタル化など生産背景を整え、工場から直接発送する「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」

◆デジタル技術を活用

Q.厳しい市場環境のなかで、新しい試みはあるのですか?

A.アパレルメーカーが既存の分野や販路だけでは収益の改善は難しくなっています。

このため、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの構築が進展しています。

オンワードホールディングスはスーツを中心としたマス・カスタマイゼーションを具現化した無在庫のビジネスモデル「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」を成長戦略として力を注いでいます。直営店をはじめとするショールーム形式の「ガイドショップ」を中心に首都圏などの利便性の高い立地にオープンしています。納品の早さも特徴の一つです。オンワードグループの中国・大連工場の受注・準備工程のデジタル化など生産背景を整えて、工場からの直接発送により、最短1週間の納期を実現。価格は3万~5万円とリーズナブルな点も市場拡大の要因となっています。同社は「カスタマイズは業界の未来を作る一つの解。大量生産、大量廃棄、供給過剰という課題に対する答えにもなる」としています。

ワールドは、同社が持つ製販のプラットフォーム(PF)を中心とした〝ロスと無駄を極小化する〟ワールド・ファッション・エコ・システム(WFES)を構築しています。

同社グループの生産や販売、デジタル事業のPFを、資本関係が無い他社に対して開放することで「業界全体の過剰生産を是正しながら、ファッション産業が勝ち残っていくようにしていきたい」としています。ワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンが共同出資で設立したオフプライスストア「アンドブリッジ」では、ファッション業界の課題である余剰在庫や商品廃棄問題を解消するオープン・プラットフォームとして、売り場を提供し、賛同する企業やブランドを募って品揃えをしています。

サステイナブル(持続可能)への意識が社会的に高まるなかで、業界として大量廃棄を生む構造から脱却する試みが相次いでいます。デジタル技術を駆使したパーソナルオーダーや、グローバルニッチなニーズに応える製販の仕組み作りが、アパレル産業復活の条件になります。

ワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンが共同出資で設立したオフプライスストア「アンドブリッジ」

◆独自の商品企画が不可欠

Q.気候温暖化が進むなかでファッション衣料のシーズンMDに変化はあるのですか?

A.従来のシーズンMDをはじめとする商慣習の抜本的な見直しが、業界全体の課題となっています。

気象庁によると、19年の日本の平均気温の基準値(81~10年の30年平均値)からの偏差はプラス0.92度で、98年の統計開始以降、16年を上回り最も高い値となりました。

一方、業界のシーズンMDは、秋冬商戦が8月末から店頭で立ち上がり、10月に入って冬物が〝頭出し〟をして、11月ごろからコートなどの重衣料を本格的に販売する。この商慣習が依然として続いています。しかし、直近の19~20年秋冬シーズンを例にとると、今年は10月まで〝夏〟と言える高温で推移し、11~12月に入っても厳しい冷え込みはほとんどありませんでした。この気象状況のなかでコートを中心とした重衣料の販売は振るいませんでした。

コートアイテムを得意とする三陽商会は「実際の気候変化に合わせたMDと、価格競争に陥らない独自の商品企画が不可欠。従来のMD戦略の見直しに向けたトライアル・アンド・エラーが必要」として、MDの見直しが検討課題となっています。その一方で、業界内からは「ファッションビジネスにおける『毎年買ってください』というコンセプト自体が今やサステイナブルではない」(ジュン)とする大胆な見方も出てきています。

Q.新型コロナウイルス感染拡大の影響は?

A.今年2月以降からの実店舗におけるファッション消費の落ち込みは大きく、業界全体への影響は甚大です。「売上高ベースで前年比7~8掛けで推移」「ミセス向けが前年比5掛けで推移している」(アパレルメーカー)などとする状況も少なくありません。特にインバウンド(訪日外国人)需要の減少が都市部を中心としたマーケットを直撃しています。

世界的な新型肺炎の広がりによる、中国などの海外生産のサプライチェーンの停滞も問題となっています。これによる店頭納期の大幅な遅れが大きな懸念材料となっています。今回の新型肺炎の影響を教訓に、インバウンド需要や海外生産などの製販における体制の見直しが課題となっています。

(繊研新聞20年3月27日付より)

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