最新版!【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・アパレル編①ー スポーツ分野について知ろう

  • 2020年08月28日更新
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今回からはアパレル編です。第1回はスポーツ分野についてです。19年はラグビーW杯が盛り上がり、20年は五輪開催が予定される中、スポーツ分野のブランドや企業の動向、素材開発などに関して見ていきます。

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◆大手2社突出した存在感 日本は五輪イヤーで期待

Q.世界的に見ると、スポーツメーカーの勢力図はどうなっていますか?

A.ナイキとアディダスが突出した大きさになっています。

ナイキは前期(19年5月期)も全世界的に売り上げを伸ばし、売上高4兆円台に載せました。ナイキは今期も好調さが継続しています。アマゾン・ドット・コムでの販売は終了しましたが、ECと実店舗が連携するパーソナライズされた顧客サービスを強化しています。

アディダスも前期(19年12月期)は好調で、北米やアジア・太平洋が伸びています。アディダスでは世界的に環境問題が取りざたされる中、1月に開かれた世界最大のスポーツ用品見本市ISPOに自らのアウトドアブランド「テレックス」を初出展しました。100%海洋廃棄プラスチックを原材料とする「フューチャークラフト・ループ・アノラック」を発表しました。

VFコーポレーション(コロラド州デンバー)は米国最大の総合アパレルメーカーで、アクティブ部門やアウトドア部門として「ザ・ノース・フェイス」「ヴァンズ」「ティンバーランド」「ディッキーズ」といったブランドを持っています。プーマは19年12月期業績で、全製品区分・全地域で2ケタ台の成長を遂げました。アパレル売上高が20億 ユーロ を突破し、主力カテゴリーのフットウェアの規模に近づきました。

アンダーアーマーは他のスポーツメーカーに比べると、米国国内での販売比率が高いのが特徴です。前期も売上高の74%を占める北米は2%減と苦戦しましたが、26%の海外市場は23%増と好調でした。利益面でも流通経路の見直しやサプライチェーンの改善、リストラ費用の減少から収益力を改善し、純利益は黒字転換しました。このほか、中国には安踏(アンタ)、李寧(リーニン)、特歩国際、361度国際といった大手スポーツメーカーがあります。

日本勢ではアシックスがトップです。アシックスは若干の減収となりましたが、前年と比べた為替変動の影響が大きく、これを除くと1.6%の増収となります。パフォーマンスランニングが健闘し、米国事業を改善したほか、ファッション寄りの「オニツカタイガー」は全世界的に人気となっています。今年は東京五輪・パラリンピックのスポーツ用品唯一のゴールドパートナーとして日本代表選手への応援ウェアや海外に向けても企業ブランドの価値向上を目指しています。

日本のスポーツメーカーは一般的なアパレルメーカーとは違って、国際化が進んでいます。アシックスは売上高の約7割、ミズノは4割、デサントも6割が海外の売上高です。

Q.日本のスポーツ用品市場の構造は?

A.スポーツメーカー、スポーツ卸、小売業という3層構造が基本です。

近年はメーカーや卸による直営店や自社EC、自主管理売り場といったDTCを拡大しており、流通構造は変化してきています。東京五輪を見据えて、国内外のスポーツメーカーは東京都心に相次ぎブランドの旗艦店を開設しています。

スポーツ小売りは百貨店や街のスポーツ店、チェーン専門店のほか、最近ではやはりEC販路が伸びています。専門店では全国的なナショナルチェーン(NC)と呼ばれるアルペン、ゼビオ・グループ、ヒマラヤ、イオン系のスポーツオーソリティの大手4社で、寡占化が進んでいます。

Q.今後のスポーツ市場の見通しは?

A.日本では昨年のラグビー・ワールドカップから始まり、今年の東京五輪、来年のワールドマスターズゲームズ関西まで続くことから〝ゴールデンスポーツイヤーズ〟と呼ばれ、スポーツ市場の活性化が期待されています。五輪に関連して、人々のスポーツに対する関心が高まり、スポーツ参加人口が増え、健康に対する意識が向上すると望まれます。

昨年のラグビー・ワールドカップは日本中にブームが起き、〝にわかファン〟も増えて、予想以上に盛り上がりました。この良い流れを引き継ぎ東京五輪も成功するように期待されています。

日本は人口減少社会を迎え、少子高齢化が進み、若者のスポーツ離れも指摘されています。この状況に対し、政府は各種イベントの開催を生かし、スポーツ産業を「成長分野」と位置付け、5.5兆円ほどのスポーツ市場を25年には15兆円へ拡大するもくろみです。ただ、ここにきて新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪の開催が危ぶまれるなど問題も出ています。

アシックスは東京五輪・パラリンピックの日本代表選手団が着用する公式スポーツウェアやシューズを発表

◆ウェア進化させる新素材 環境配慮もますます重要に

スポーツ、アウトドアウェアには、激しい運動やあらゆる気象条件に耐えられる高機能な素材が欠かせません。アスリートの要求に応えてテキスタイルもどんどん進化し、タフさや快適性といった切り口以外に、最近では運動データが測定出来るスマートテキスタイルなどの活用も進んでいます。また、ユーザーの環境への関心も高く、環境負荷を抑えた素材が広がっています。

■高機能

「汗を素早く吸って乾かす」「泥汚れを落ちやすく」「夏場の炎天下でも太陽光を遮断し、熱中症防止に役立つ」「雨風を防ぎ、衣服内の蒸れを解消する」――こういった優れた機能を持つスポーツウェアが多くあります。

これらの機能は、いずれもテキスタイル(生地)の力によって実現したものです。多くは機能性に優れた合成繊維が使われ、機能を持った糸の開発、織り方や編み方の工夫、生地に特殊な機能剤を付けるといった方法で日々、進化しています。

水を弾く撥水加工。環境に配慮した薬剤の採用が進む

■スマートウェア

腕時計型で心拍や睡眠状態などを測定できるスマートウォッチが増えていますが、衣服でも同様の機能を持ったスマートウェアが注目されています。繊維がセンサーの代わりになって生体データを計測し、服に取り付けた端末などに送られる仕組みで、肌にしっかり密着して心臓近くのデータもとれるため正確な情報が得られます。

スポーツ分野では運動効果を見るだけでなく、選手の位置情報をもとにチームの戦術作りに活用したり、スニーカーに埋め込まれたセンサーがパフォーマンス向上をアドバイスするといった使われ方が始まっています。

運動効果などを測定できるスマートウェア

■サステイナブル

最近、サステイナビリティー(持続可能性)という言葉が急速に広まっています。アウトドア愛好家らは以前から地球環境に対して関心を払ってきましたが、社会で広く課題が共有されるようになり、スポーツメーカーもサステイナブル素材の採用を進めています。

代表的なのはペットボトルリサイクルです。使用済みペットボトルは洗浄、再利用によってポリエステル繊維の原料になります。無駄なごみを減らして再利用する、循環型の取り組みとしてリサイクルされたウェアも増えています。ほかにも、人体の健康への影響が心配されているフッ素系の撥水(はっすい)剤を使わない動きが広がり、撥水加工の置き換えも進んでいます。

(繊研新聞20年3月13日付より)

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