最新版!【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・川上編②ー 世界に通用する日本の物作り

  • 2020年08月28日更新
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前回では、服に使われる繊維の種類や繊維メーカーにどういった企業があるかなどを学びました。今回は実際に日本国内で生地や製品がどうやってできているのか、どこで作っているのかなどを学んでいきましょう。

【関連記事】【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・川上編①ー 繊維を知れば、もっと服がわかる

■品質や機能、デザインに高い評価 産地で培われた技術生かし

Q.日本の服はほとんど海外製ではないのですか?

A.縫製品の多くが海外で作られていますが、生地の生産地とは決して一緒とは限りません。

確かに衣料品の輸入浸透率は18年に97.7%を記録するなど海外生産が圧倒的です。ただ、あくまで縫製する場所であり、生地も中国やタイ、インドネシアなど海外で多く生産されていますが、高品質、高付加価値な素材は日本製も多くあります。日本で生産した生地を海外で縫製して再び日本に持ち帰る「持ち帰り輸出」も一般的です。例えばアウトドアで使われるダウンなど高機能衣料や中東の人が着る白い民族衣装、高級ジーンズなどは日本製の生地を用いるケースも多く、その品質の高さが評価されています。

「日本の素材は品質が高い」と言いますが、改めて考えるとどういったことでしょうか。風合いや質感といった生地そのものの高級感や機能性を指す部分もありますが、顧客が要望した色合いを正確に表現したり、リピート生産で全く同じものを再現する力も優れており、そうした安定感も品質の良さの一部となっています。このため、欧州の高級ブランドなどでも日本製の生地は多く使われています。

合繊高密度織物など世界で高い評価を得ている日本素材は多い

Q.日本で生地を作っているところってどこですか?

A.各地にテキスタイルの産地があります。

紡績や合繊メーカーなど原料を作る会社は生産設備を持つのに多額の資金が必要なので、大企業が多いですが、生地を作る機屋やニッターといった会社は設備投資額も比較的少なくて済むことから中小企業が多く、そうした企業が集積している場所を産地といいます。多くはもともと奈良時代や江戸時代から織物などの繊維製品を生産していた場所で、長年そこで培われた技術を生かして現在も生地を生産しています。

例えば合繊テキスタイルで知られる福井や石川は、奈良時代からシルクの織物を生産しており、その技術を生かして一大産地として発展しました。産地の場所によって作られる品種は異なり、合繊織物は北陸、綿織物だと播州や三備、毛織物だと尾州が有名です。

テキスタイル産地は全国に

テキスタイル生産は、準備工程や染色加工など工程ごとに様々な業種が分業で担っている分業制のため、一つのまとまった場所にあった方がコストでも時間でも効率が良いですね。例えば、織物は糸を織機にかける前の準備段階や染色整理加工といった工程があります。一度にたくさんの量を生産する必要があり、生産コストが非常に高くなります。物量をまとめる上でも、産地の存在は必要です。また、いちいち遠くの染工場に生地を持って行っては時間もコストもかかるので、かつては地域の機屋同士がお金を出し合い、染色工場や整理加工場を作ることもありました。近距離に各工程の工場があれば、工程間で起きるトラブルにすぐに対応できるメリットもあります。

高度経済成長期の頃には日本が今の中国のように、海外に多くの生地を輸出していました。最近では産地の生産量が減少、高齢化や後継者問題などもあり、産地をめぐる環境は厳しさを増しています。各社は自らアパレルと直接取引する自販に乗り出したり、製品ブランドを立ち上げ直接消費者にアピールをするなど、産地活性化に向けた取り組みを強めています。

一方、生地産地以外にも縫製産地もあります。例えば岡山県倉敷市の児島は、学生服、ワーキングウェア、ジーンズの縫製産地として有名です。ジーンズのイメージが強いかもしれませんが、それはもともと学生服を生産していた企業がジーンズ生産を始めたことがきっかけ。岡山から広島にまたがる三備地区にはジーンズやデニムメーカー以外にも数多くの学生服メーカーやユニフォームメーカー、縫製工場が存在します。とくにスクールユニフォームといった分野は、入学が決まってから入学式までの間に必ずサイズにあった制服を全員分用意しなくてはいけません。オーダーメイドを超短納期で仕上げるためには国内縫製が不可欠なのです。

■無駄なく自分らしい服を マスカスタマイゼーションへ

Q.産地で作られた生地はどうやって流通していくのでしょうか?

A.メーカーのほか、産元商社の受注で生産され、流通していきます。

一般的に機屋や染工場などの産地企業は発注元である合繊メーカーや紡績、商社からの受注に応じて生産し、加工賃を受け取っています。産元商社と呼ばれる産地の商社がアパレルや大手商社などからの受注を取りまとめ、中小の機屋に生産を委託する役割を担うこともあります。日々工場を動かさなければいけない産地企業からすれば、営業をしてくれてアパレルやSPA(製造小売業)から注文を取ってきてくれる産元商社の存在は非常に大きいわけです。

産地で作られた生地は商社やコンバーターなど卸売り業者からアパレルが購入するケースが多いです。服地卸や商社の中には作ったものを在庫しておく企業も多く、生産の調整弁としても機能しています。

一般的に合繊や紡績、染色、織布と工程ごとの生産ロット(製造最小単位)は川上にいくほど大きくなりますが、一度に大量の生地を必要とする企業は限られており、最近ではトレンドの多様化によりそうした多品種小ロットに拍車がかかっています。受注やロットをまとめるという意味でも、商社や服地卸の役割は大きいのです。ただ、自ら営業機能を持ち、アパレルに出向き直接やり取りをする機屋やニッターなども最近では増えつつあります。

Q.最近ではオーダーメイドのスーツなどが身近になってきたような気がします。マスカスタマイゼーションはこれからの物作りで重要になってくるのでしょうか?

A.消費者の趣味や嗜好(しこう)が多様化している昨今、自分に合ったサイズやデザインの服が欲しいというニーズは高まっています。

衣料品の大量廃棄が問題になるなど、大量生産大量消費の生産システムについても批判が高まっており、サステイナビリティー(持続可能性)の観点からも「お客さんが欲しい時に欲しい物を欲しい分だけ生産する仕組み」が強く求められています。繊維機械メーカーや縫製機器メーカー各社は、そうした社会のニーズに応えるべく様々な機械を開発しています。

島精機製作所の無縫製横編機「ホールガーメント」は、縫製が不要で糸さえあればすぐに服が作れる横編機。ニットならではの立体的な物作りや生産リードタイムの短さが特徴的で、無駄のない物作りやマスカスタマイゼーションを実現する機械としても注目を集めています。

フランスのレクトラの「ファッション・オン・デマンドバイレクトラ」もマスカスタマイゼーションに対応するシステムと言えるでしょう。採寸データなどオーダーを自動で処理するソフトウェアと自動裁断機を複合して、店頭でのオーダー処理から生地の裁断までのプロセスを自動化。量産並みのスピードでオーダー生産を可能にする仕組みとして国内外で導入が始まっています。

そのほかにもミシンメーカーのJUKIは、自動縫製システムの開発に力を入れているなど、衣料品のスマートファクトリー実現に向けた動きは活発になっています。

店頭での物作りに対応するシステムの提案も(島精機製作所)

(繊研新聞20年2月28日付より)

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