最新版!【アパレル業界・基礎講座2020】ー業界構造・川上編①ー 繊維を知れば、もっと服がわかる

  • 2020年08月19日更新
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服ができるまでの道のりは長く、日本の繊維産業はこのプロセスを多くの企業が分業することで成り立っています。ここからは、繊維・ファッション産業を構成する様々な業界のあらましについて、質問に答える形で解説していきます。今回は素材です。

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まずは、服の素材がどのように作られるか見ていきましょう。繊維・ファション産業はよく、川の流れにたとえられます。「川上」「川中」「川下」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。服の起点である糸・わたを作る業界や企業は川上、生地の生産、流通に関わるところは川中、縫製品にする企業が流通を川下と呼びます。もしくは流通、小売業を含めて川下と呼ぶこともあり、この場合は川上と生地の川中を総じて川上、アパレルと縫製が川中になります。今回は後者の定義で見ていきます。

■暮らしを変える素材の力

Q.服というとデザインやシルエットに目が行き、素材はあまり気にしたことがありません。なぜ重要なのですか?

A.素材は、服のデザインや着心地に直結する大事な要素です。

例えば、ストレッチが利いた服は今や当たり前ですよね。これはスパンデックス(ポリウレタン弾性糸)という合成繊維の広がりからです。1950年代に米国で開発されて以来、様々な衣服の常識を変え、着用者に快適をもたらしました。シルエットに無駄なゆとりをとる必要がなくなり、タイトな服がスマートに着られるようにもなりました。

スパンデックスは、新しいコンセプトの服も生んでいます。例えば、スポーツなどで着用されるコンプレッションウェア。筋肉の疲労を軽減するといった効果が注目され、部分的に強い着圧を持たせたタイツなどが2000年代以降に登場しました。

洗えるポリエステルのスーツも、すっかり身近なアイテムになったと思いますが、これにも素材の進化が見てとれます。スーツの素材はかつて、ウールがほとんどでした。ポリエステルの開発が進み、元々持っている強さやしわになりにくい特徴に加え、見た目も質感もよりウールに近いものができるようになったからです。

Q.素材には、たくさん種類があるのですね。

A.素材は、原料から生まれた〝繊維〟、それを紡いだり、撚ったりして作る〝糸〟、糸を織ったり、編んだりした〝生地〟を含み、広義的に使われます。

まずは、繊維を見ていきましょう。表のとおり、服に使われる繊維の種類は大きく、天然繊維と化学繊維の二つに分けられます。

生産量はポリエステルが圧倒的に多い

天然繊維はその名のとおり、自然界にあるものから作られる繊維。植物繊維と動物繊維があります。植物繊維の代表は、綿と麻。光合成で生成されるセルロースが主成分です。動物繊維は羊毛(ウール)やカシミヤなどの獣毛、蚕が作る繭から採れる絹(シルク)など。主成分は、動物自身が作るタンパク質です。綿は、綿花からわたを取り出し、ウールや獣毛は、羊やヤギなどから刈り取った毛を紡いで糸にします。この工程を、「紡績」と言います。

化学繊維は、人の手で化学的に作られます。化学的な手段の違いで、三つに分類できます。レーヨンやキュプラなどは、再生繊維と言います。木材パルプなど植物由来の物質を溶かし、再び繊維状にするためです。アセテートは半合成繊維。元になる天然の物質に化学薬品を部分的に結合させた後、繊維にするから「半」です。ポリエステルやナイロン、アクリルなどは、合成繊維といいます。元にする物質そのものも、化学的に作り出したものだからです。

ふわふわのわたを紡いでいく天然繊維に対し、化学繊維の原料はどろどろとした液体です。合繊は石油が主原料です。原料を熱や溶剤で溶かしてから、じょうろの口のように穴がたくさん開いた口金から押し出し、巻き取って糸にしていきます。ところてんを押し出す様子をイメージするとわかりやすいでしょう。この工程を「紡糸」といいます。こうしてできた糸を何本か撚り合わせることで服に使う糸ができます。紡糸した糸を短く切って使うこともあります。天然繊維と同様に紡績して糸にし、ウールや綿のようなナチュラルな風合いに近づけられます。

着ている服がどの繊維を使って作られているかは、服に付いている品質表示のタグを見ればわかります。繊維の特性を理解するためにも、肌触りや着心地と合わせてチェックすると良いでしょう。

化学繊維は溶かした原料をノズルから吐出して糸を作る

■作り手は、よく聞くあの会社

Q.繊維のメーカーは、日本にもあるのですか?

A.テレビのCMや新聞広告などで東レ、旭化成、帝人、クラレ、三菱ケミカル、ユニチカといった会社の名前を見たり、聞いたりしたことがありませんか。

今はどこも繊維以外の事業領域を広げ、素材メーカーや総合化学メーカーとして知られていますが、繊維の生産から始まった会社です。東レは東洋レーヨン、帝人は帝国人造絹絲(人造絹絲はレーヨンのこと)、クラレは倉敷レイヨンという社名でした。今の社名にその名残が見られます。

かつて合繊メーカーは、ポリエステル、ナイロン、アクリルをはじめ、あらゆる種類の化学繊維を製造販売していました。その後、低価格な中国メーカーなどと競合し、90年代以降はリストラや事業撤退を重ね、今では得意な素材に絞っています。

ウールの見た目や膨らみで高い伸縮性も備えるポリエステル織物(帝人フロンティア)

世界で日本の企業だけしか生産していない繊維もあります。スーツの裏地や、ユニクロの「エアリズム」など夏の肌着にもよく使われているキュプラは、旭化成だけ。シルクのような光沢や風合いで、婦人服地に使われるほか、ブラックフォーマルの最高級素材としても知られるトリアセテート(アセテートの一種)は、三菱ケミカルだけが作っています。

名前に〝紡〟が付く会社も、よく見聞きしませんか? それらの多くは、紡績業からスタートした会社です。綿紡績では日清紡ホールディングスやダイワボウホールディングス、クラボウ、日東紡、シキボウ、富士紡ホールディングスなどが大手です。合繊が主力の東洋紡やユニチカも祖業は綿紡績です。ウールではニッケやトーア紡コーポレーション、麻では帝国繊維やトスコといった会社があります。明治時代に創業した会社も多く、日本の製造業の出発点とも呼べる存在です。

Q.最近の新聞では、スパイバーなど、ここまでには出てこない名前の企業や素材もよく目にします。

A.バイオテクノロジーによる新素材が世界で相次ぎ開発されています。

ファッション産業で、サステイナビリティー(持続可能性)の取り組みが世界的に重視されるなか、枯渇資源である石油も、生きた動物も使わない次世代素材として世界的に注目されており、採用も進んでいます。欧米のベンチャーらも、開発に乗り出しています。

日本のスパイバーが作る微生物発酵による人工たんぱく繊維は、その代表です。主原料を石油などの化石資源に依存せず、細胞骨格やクモの糸のように構造的な役割を果たす構造たんぱく質(ブリュード・プロテイン)を、微生物による発酵プロセスで生成し、それを紡糸・加工する独自技術があります。実用化でも先行しており、今後ますます注目される素材です。

糸から製品になるまでたくさんの工程があり、分業で成り立っている

(繊研新聞20年2月14日付より)

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