最新版!【アパレル業界・基礎講座2020】業界の課題「アパレル不況」をどう乗り越えるか

  • 2020年08月14日更新
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日本のファッションビジネス(FB)産業は現在、大きな岐路に立っています。昨年10月の消費増税により市況は厳しさを増し、大手アパレル企業の三陽商会やオンワードホールディングスが不採算事業からの撤退や希望退職者の募集といった「構造改革」に踏み切りました。

「アパレル不況」とも呼ばれる状況は増税以前から続いてきました。長年にわたる〝過剰供給〟や、市場環境や消費者の変化への対応が遅れてきたことが背景にあります。そこで、各企業は現在①EC(ネット販売)強化②ライフスタイル分野への進出③海外市場の開拓--といった事業の改革を進めています。

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■リアルとECの融合

繊研新聞社の調査では、18年のファッション商品の売上高に占めるECの割合は11.3%に上昇し、売上高合計は1兆円を超えました(下記グラフ参照)。実店舗での販売が年々低下を続け、EC強化は企業戦略の最重点課題になっています。

アパレルのECはゾゾタウンやアマゾン、楽天市場などECモールへの出店が中心でした。最近は自社サイトを強化・充実し、ECモールと併用する動きも盛んです。実店舗とECを融合する戦略も重要です。

これは「オムニチャネル」という考え方で、消費者がいつでも商品を購買できるようにECや店頭、SNSをつなぎ、いつでもどこでも商品を注文、好きな時に好きな場所で受け取れるようにすることです。

■幅広いサービス、製品

アパレル企業が化粧品や生活用品、あるいは飲食やホテル業などにもビジネスを広げています。特に、化粧品は多くの企業が取り組んでいます。若い女性消費者がアパレルブランドの客層と重なり相乗効果が見込めるからです。ホテル事業も良品計画やストライプインターナショナルが自社ブランドの大型店との併設でプロデュースしたり出店しています。飲食も多くの企業がカフェやスイーツなどの店を出しています。

こうした製品やサービスはライフスタイル分野と呼ばれています。ファッションはアパレルや服飾雑貨を指すだけでなく、広い意味では生活様式、つまりライフスタイルも含まれます。

幅広いサービスや製品を提供することでブランドのファンを広げ、アパレルの減収分を補う事業の領域や規模を拡大しようとしているのです。

■アジアは成長市場

海外市場ではアジア、特に中国や東南アジアがターゲットになります。日本市場は縮小していますが、こうした地域は経済発展で収入が増え、生活レベルも上がり、大きな成長が見込めるからです。

ただ、日本ブランドは「ユニクロ」や「無印良品」などを除けば、まだ知名度や競争力が低いのが現状です。そこで注目されているのが「越境EC」です。日本のブランドでも英語や中国語に対応したECサイトを備え、海外からの注文を受けることを指します。

訪日外国人は3000万人を突破しましたが、日用品や化粧品などは越境ECで購入する海外の消費者が増えています。まだファッション分野では日本企業の越境ECは遅れていますが、ファッションやコスメでは韓国ブランドが越境ECにより、日本でも若い消費者に人気が高まっています。こうした事例も参考に、今後は中国だけでなく、東南アジアでも拡大が期待できるでしょう。

■〝本業〟の再構築を

こうした事業改革を成功に導くためには、〝本業〟であるアパレルのブランドや製品のレベルアップが不可欠です。労働コストが安価だからという理由だけで、競争力の低い製品を作り続けていては、欧米の高級ブランドはおろか、中国や韓国との競争にも勝ち残れません。

まず、日本のクリエイション力を集めることです。欧米でも高い評価を受ける日本人デザイナーや素材メーカーは少なくありません。アパレルの企業もこうしたクリエイションを取り入れ、あるいは共同で物作りを進める必要があります。

■持続可能な産業へ

自然環境に優しい原材料や加工でサステイナビリティーの要素を取り入れることも当然です。加えて、焼却処分をしなければならないような、無駄な在庫を作らないことも必要です。そのために、企画や生産、物流といったサプライチェーンにAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などデジタル技術を取り入れる動きも出ています。

日本国内での物作りを見直すことも必要です。アジアの消費者には「メイド・イン・ジャパン」は高品質な製品の代名詞でもあります。最近は国内でも「スマートファクトリー」と呼ばれる工場が生まれています。消費地の近くで企画や生産を行うことで、消費者の変化を素早く把握し、機敏に対応することもできるでしょう。

■FB業界を取り巻く環境の変化

①国内市場の縮小

消費増税後、10月の百貨店や量販店など大手小売業は大きく売り上げを落とし、特に衣料品は2ケタの減となりました。11月はやや持ち直したものの、暖冬の影響によるコートなど防寒衣料の苦戦も加わり、大きくは改善していません。20年も大半の企業は、国内のファッション市況が大きくは回復しないと見ています。

15年ごろからは「アパレル不況」という言葉も使われ始めました。背景には、長年にわたる供給過剰の業界構造があります。90年の国内アパレル市場は小売価格で約15兆円規模でした。その後の長期不況やリーマンショックの影響もあり、現在は約3分の2に縮小しました。

②供給過剰、価格低下

この間の国内市場へのアパレル製品の供給量は倍増しています。また、90年当時に半分近くを占めた国内生産は、労賃などコストが低い中国や東南アジアなどに移転。国内供給量に占める海外生産の比率(輸入浸透率)は今では97%を超えています。

当然の結果として、アパレル製品の小売価格は下落を続け、平均単価は90年の半分以下に低下しています。

③購入より借りる

日本は少子超高齢社会に突入し、人購入量は大きくは増えません。最近は衣料品を定額制でレンタルしたり、「メルカリ」などで消費者同士が売り買いする行動も盛んです。古着の人気も高くなっています。

その結果、売れ残る商品が大量に発生し、アパレル企業の収益を悪化させています。売れ残った在庫を焼却処分することが資源の浪費や二酸化炭素の増加につながり、環境への負担になると、サステイナビリティー(持続可能性)の観点から批判も強まっています。

④人口減、中間層も

日本社会は65歳以上の人口が総人口の3割近くを占める超高齢社会に突入し、総人口、特に若者が減少を続けています。所得は二極化が進み、200万円未満の年収で働く雇用者が3分の1近くを占め、「富裕層」も増えています。低所得層と富裕層への二極化により、都市部のサラリーマンなど中間所得層が減っています。

⑤衣料の支出大幅減

2人以上の勤労者世帯の1カ月の可処分所得は、00年から18年の間に1万8000円、年間にして約22万円も減少しました。この間の家計消費支出は合計で月約3万円減少し、スマートフォンの普及などに伴う通信費などは支出が増える一方、衣料品関連は実に35%も減少しました=(下記グラフ参照)。

(繊研新聞20年1月24日付より)

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