【アパレル業界・基礎講座】 価格編 服の値段はどう変化したのか?

  • 2018年01月18日更新
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前回「業界構造編 服はどこで売られているのか?」で、日本市場の服を売る販路の過去10年の変遷を見てきました。中~高級品の販路としての百貨店、日常的に使う実用衣料を売る量販店の売り上げ規模がそれぞれ低下し、両方のシェアを奪う形で専門店が拡大した一方、新たな販路として台頭したネットの伸びを背景に通信販売が伸びています。今回は、市場に占める服の値段がどのように変化したのか学びます。

Q販路別の売り上げシェアは?

  • 百貨店と量販店合計で3割
  • 専門店が5割を超える
  • ネット伸び、通販1割強に

まずは前回までに見てきた、衣料消費市場の金額ベースの規模が07~16年でどのように変化したのか、販路ごとの増減とともに見ていきます。

グラフ①で示しているとおり、市場規模は09~12年までは9兆円割れの水準が続きましたが、13年から9兆円台を再び突破し、16年は10年前の07年と同水準です。

規模全体の推移だけで見ると、市場規模は見かけ上、10年前と同じレベルに回復したと言えますが、販路ごとのシェアはこの10年で大きく変わりました。百貨店のシェアは07年で3割程度でしたが、16年には2割に、量販店のシェアは2割弱から1割強に低下しました。

背景には専門店の規模拡大があります。08~12年を含め、この10年はSCの開業数が増え、専門店の出店立地が増えました。セレクトショップなど中~高級品主力の専門店は百貨店のシェアを、ユニクロやジーユー、しまむらに加え、海外のファストファッションは量販店のシェアをそれぞれ奪いました。

専門店のシェアは07年の45%から、16年には55・5%になりました。もう一つ、この10年の変化で大きいのは通信販売、特にECの成長です。スマートフォンの普及と「ゾゾタウン」などファッションに特化したECモールの成長が呼び水となり、通信販売の市場シェアは13%まで上昇しています。

Q低価格商品のシェアは?

  • 07年は市場の4割
  • 08年から急拡大
  • 16年は5割弱に上昇

市場の変化を別の角度から見てみましょう。グラフ②は07年と16年で市場に占める低価格商品と中価格以上の商品の販売シェアがどのように変化したかを比べたものです。リーマンショック前の07年は、量販店やユニクロ、しまむらなど低価格で買える服のシェアが4割程度でした。

それが16年には48%と市場のほぼ半分を占めるまで拡大しています。07年と16年では、市場規模はほぼ同じなので、この10年で、日本で買われる服の価格帯の分布に大きな変化が起こったことが見て取れます。

08年以降の消費低迷期、ファッション業界は衰えた購買意欲を喚起するためにそれまでより安く買える服をたくさん作り売るようになっていきました。国内ではユニクロやしまむらが市場で注目を集め、ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングがジーユーを07年にスタートしました。

この時期、H&Mやフォーエバー21など海外のファストファッションも日本に進出しました。ベーシック、トレンド双方で低価格で服を売る大手小売りが消費者の支持を得るようになった結果、それまで中間価格帯の服が主戦場だった専門店の多くも服の値段を引き下げ、低価格分野のシェアが増えたわけです。

Qお手頃価格の服を売るのは?

  • 大手3社がシェアを拡大
  • 根強いニーズに他も追随
  • 低下する量販店シェア

低価格で買える服を売っているのはどういった小売業なのでしょうか。過去10年の低価格分野の衣料品の市場規模の推移を販路ごとで分け、その変化を表したのがグラフ③です。低価格の衣料品の市場規模は全体で見ると、消費不況の強まった09年以降、拡大していることがわかります。

12年以降は市場規模が4兆円を突破し、直近2年は頭打ちとなっているものの、4兆5000億円を超える水準で推移しています。特に目立つのは、ユニクロ、ジーユーとしまむら3社の売り上げ規模が右肩上がりに拡大していることです。3社のシェアは07年に2割でしたが、16年には3割強に達しました。

一方、量販店は低価格分野の規模が全体として伸びる中で、縮小が続いています。07年には低価格衣料品市場に占める規模が44%と最大勢力でしたが、前述の3社や海外ファストファッションの伸びに押され、売り上げが減少。16年のシェアは全体の4分の1を割り込みました。

グラフの「その他」は海外ファストファッションや国内の専門店から成ります。低価格商品を主力にする店のほか、低価格化の流れに乗ってエントリープライスを押し下げた専門店も含んでおり、その伸びからも購買意欲喚起には価格を引き下げる努力が小売業各社にとって欠かせなかったことが見て取れます。

Q価格の主流はどうなった?

  • 低価格分野がじりじり拡大
  • コスト上昇の価格転嫁進まず
  • 根強い「安く買える」への支持

市場における服の価格と価値のバランスはどのように変化しているのでしょうか。グラフ④は、低価格分野と中間価格以上の衣料品の市場規模と、平均単価の変化を過去10年間で見たものです。07年には6対4の比率だった低価格衣料と中間価格以上のバランスは16年にはほぼ拮抗(きっこう)しています。

07~11年までは、衣料品の平均単価も下がり、その分、低価格分野のシェアが伸び、中間価格以上のシェアは減るという構図でした。その後、12、13年は平均単価がそれほど変化せず、低価格、中間価格以上双方の規模が増えました。この2年は服の価格の相場が全体として上がっていたことになります。

ところが、14~15年に平均単価は急上昇しました。供給の主力である海外生産のコストがこの間の円安で上昇したためです。この時、有力専門店各社がコスト上昇を小売価格に転嫁しました。ただ、値上げに伴い、ファッション消費は再び停滞し、価格訴求の流れが再び強まりました。

このため中間以上の価格帯の衣料品の市場規模は15年に減少し、一方で低価格分野は拡大が続きました。これを受けファッション業界は相次いで価格を引き下げたのですが、景気回復の実感が乏しい状況が続いていることもあり、16年は価格帯を問わず、衣料品の消費の伸びは横ばいの状況になったのです。

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