【アパレル業界・基礎講座】 業界構造編 服はどこで売られているのか?

  • 2018年01月09日更新
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
S624x416 shutterstock 372270265

前回「消費・市場規模編 日本でどれだけ服は売れている?」で、日本の衣料消費市場の規模が金額、数量それぞれで過去10年、どのように推移したのかと、一般的な消費者の所得や服にかける金額、服を買う枚数がどう変化しているのかを見てきました。

今回はファッションがどこで売られているのか、販路別の過去10年の変化を見ていきます。

Q市場規模はどう変化した?

  • 14年から金額の伸び鈍化
  • 服の単価は高水準維持
  • 16年の規模は前年比横ばい

グラフ①は前回見てきた、服の消費市場の規模が07~16年の10年間でどのように推移してきたかを表したものです。金額ベースでは16年が9兆6500億円でほぼ10年前と同じ水準となりました。過去6年、金額ベースの規模は増加が続いていますが、16年は伸び率が鈍化し、前年とほぼ横ばいでした。

金額ベースの規模の増加が続いたのは11~13年までは消費マインドの緩やかな回復によるものでした。しかし、翌年の14年は消費増税に伴い、消費が再び冷え込みました。にもかかわらず、14、15年も金額ベースの規模拡大が続いたの理由の一つは、商業施設の開業が相次ぎ、専門店の出店が増えたことが挙げられます。

また、14年からの円安で、衣料品の調達コストが上昇し、小売業各社は衣料品の販売価格を引き上げたことも理由です。グラフを見ると、市場への衣料品の供給数量は13年をピークに14年、15年は減少していますが、同じ期間の服の平均単価は上昇しています。価格が上がった分、金額ベースの市場規模は増えました。

消費者の購買意欲が減退し、服の購買枚数も減っても、1枚当たりの値段が上昇していたため、見かけ上、金額ベースの市場規模は拡大したことになります。16年は前年より円高になり、服の平均単価は下がったのですがまだ高水準にあり、その結果、金額の規模は前年と横ばいを維持したと考えられます。

Q消費者が服を買う場所は?

  • 専門店のシェアが拡大
  • 百貨店、量販店は縮小
  • ネット販売も拡大続く

次に同じ10年間で消費者が服を買う場所がどのように変化していったのかを見ていきます。グラフ②はファッションを販売する小売業を百貨店、量販店、専門店、通信販売と四つの販路に分け、それぞれの売上高の規模がどう推移しているかを表したものです。

グラフを見れば分かる通り、四つの販路の中でもっとも規模が大きく、この10年でも成長が続いたのは専門店です。地方都市の個店も、ユニクロやH&Mのような大手SPA(製造小売業)も、中~高級品を扱うセレクトショップも、ファッションに特化した小売店は専門店の範疇(はんちゅう)に入ります。

Sorbis / Shutterstock.com

専門店が成長した理由は大きく分けて二つあります。一つは前述の国内外の大手SPAが規模を生かした価格競争力を武器に、ベーシック、トレンド双方のマス需要を取り込んで存在感を高めたこと。もう一つは商業施設の新規開業に伴う出店立地の拡大がこの10年続いたことです。

結果、量販店は大手SPAやしまむらなどに市場規模を奪われ、百貨店はSCに大量出店した中価格以上の衣料品の市場シェアを奪われました。

もう一つ伸びている販路に通信販売がありますが、これはカタログや訪問販売ではなく、この10年で急速に普及したネット販売が大きく成長したためです。

Q販路別の規模はどう変化した?

  • 専門店のシェア5割強に
  • 百貨店はシェア2割まで低下
  • ネット伸び通販が量販店上回る

専門店、通信販売、百貨店、量販店それぞれの衣料品販売の規模の変化を少し詳しく見てみましょう。グラフ③は、直近の16年とその10年前の07年で、市場全体に占める販路別の売上高のシェアがどのように変化したかを示したものです。これまでに見てきた通り、07年と16年の市場規模はほぼ同じです。

ただ、販路ごとの勢力図は大きく変わっています。とりわけ目立つのが専門店の規模拡大でしょう。07年に全体に占めるシェアは45%でしたが、16年には55%と過半を占めるまでに拡大しています。出店立地であるSCの開業が続いたことと、大手SPAが消費者の支持を得て店数を増やしたからです。

この結果、百貨店と量販店のシェアは低下しました。百貨店のシェアは07年の30%が、16年には20%になり、量販店も18%あったシェアが12%まで低下しました。

百貨店は中~高級品、量販店は低価格の日用品と、カテゴリーは違いますが、両分野のシェアを専門店に奪われたことが見て取れます。

最後に通信販売ですが、前述の通り、ネット販売の急速な普及に伴い、この10年拡大が続いています。「ゾゾタウン」などECモールの成長もありますが、実店舗を持つ小売業各社が自社ECに力を入れ始めたことも要因です。07年にわずか7%だった市場に占めるシェアは13%になり、量販店を上回りました。

【アパレル業界研究】EC市場が成長を続けるワケは?市場規模や今後の動向にも注目

スマートフォンの普及を背景に急速に拡大しているEC市場。アパレル・ファッション業界でも多くの企業がEC事業に参入し、いまや欠かせない販路のひとつとなっています。今回はアパレル・ファッション業界におけるEC市場の現状や今後を紹介します。

Q市場で売れている価格帯は?

  • 低価格分野が一貫して成長
  • 中~高価格は景気の影響大
  • 「安くて使える」が当たり前に

ここまで規模と販路の変化でファッション市場の変化を見てきました。では、市場で消費者に支持されている衣料品の価格帯はどうなのでしょう。グラフ④は、市場に流通する衣料品を中~高価格の商品群とそれ以下の低価格で買える商品群に二分したシェアの推移です。

ここで言う中~高級品はカジュアルでいえば、シャツやセーターなどトップで1枚1万円、ボトムで1万5000円、アウターで2万~3万円が裾値の商品を指します。一方で低価格はトップであれば2000~4000円、ボトムで2000~4000円から、アウターなら1万円以内で買える価格を指します。

この区分に沿って作ったグラフを見ると、08~11年の市場規模全体が縮小傾向にあるときも低価格分野の衣料品の市場規模は伸びており、消費者の節約志向を捉えていることが分かります。12年以降は中~高価格の衣料品の市場規模も拡大していますが、低価格分野もその規模の拡大は続きました。

この10年、景気動向がどうあれ、低価格分野が一貫して支持されたことは、ベーシックでもトレンドでも、安くてもそれなりのレベルの服が買えることが消費者にとって当たり前になったということでもあります。今後、消費者が認める価格と価値の適正なバランスがない小売業は勝ち残れないと言えます。

    関連する記事

    この記事に関連するキーワード

    新着の求人最近公開された求人

    話題のキーワードキーワード一覧

    月間ランキング月間アクセスランキング

    週間ランキング週間アクセスランキング