【アパレル業界研究】 百貨店の現状と今後の動向を5分で学ぼう!

  • 2017年07月25日更新
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アパレル業界における重要な販路のひとつである百貨店。歴史と伝統があり、幅広い世代からの認知度も高い業種です。一方、ネット通販やショッピングセンターとの競合激化や衣料品の不振など、百貨店を取り巻く環境は大きく変化しており、時代に合わせた対応力も求められています。そんな百貨店業界の現状と今後は?

目次

  1. 百貨店とは?
  2. 百貨店とショッピングセンターの違いって?
  3. 百貨店業界の特徴って?
  4. 百貨店業界の現状は?
  5. 百貨店は現状にどう対応している?
  6. 今後の百貨店業界はどうなる?
  7. まとめ

百貨店とは?

Kametaro / Shutterstock.com

みなさん百貨店と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか?「何でも揃う」「丁寧な接客をしてくれる」「高級品を扱っているところ」などなど、様々な印象を持っているのではないでしょうか。

経済産業省の商業統計によると、百貨店とは「衣・食・住の商品群のそれぞれが10%以上70%未満を取り扱い、売り場面積の50%以上において対面販売を行う業態」と定義しています。

つまり、アパレルに限らず、ワンストップショッピングができる衣・食・住の幅広い品揃えと、きめ細かな接客サービスによる対面販売に優位性を発揮できるのが百貨店です。もちろん、アパレル業界における大きな販路のひとつでもあります。

日本では1904年に三越呉服店(当時)が「デパートメントストア宣言」を公表し、百貨店という業態を目指したのが始まりです。これまでの仕入れから販売までの商習慣を否定し、「公衆の利益を最優先する」「フェアプライス」など経営理念を転換して今の百貨店の基礎を築きました。

百貨店とショッピングセンターの違いって?

例えば、みなさんがアパレル製品を買いに新宿に行くとします。伊勢丹とルミネがありますよね。

伊勢丹はご存知の通り百貨店なのですが、ルミネは百貨店ではありません。その違いってどこにあるのでしょう?

もっとも大きな違いが、伊勢丹は小売業であり、ルミネは不動産賃貸業であるということです。

小売業とは「製造業者・卸売業者から商品を購入し、最終消費者に販売する事業」で、百貨店はこの小売業に分類されます。自ら顧客動向を分析して商品を自前で仕入れ、販売することを主な業務としています。

一方で、ルミネなどのショッピングセンターは不動産賃貸業に分類されます。商業施設を開発、運営することを通して、不動産価値を高めて、利益を生み出すことを目的にしています。入居者に建物の一部を貸し、その賃料が主な収入源となります。

消費者から見ると、どちらもアパレルを扱う場所ではありますが、ビジネスモデルに大きな違いがあるということですね。

百貨店業界の特徴って?

pio3 / Shutterstock.com

百貨店は、商品の取引形態や売り場の作り方にも特徴があります。アパレル業界ではメジャーな用語ですので、頭に入れておきましょう。

「消化仕入れ」  売れた時点で仕入れが発生する取引形態

小売業に納品された商品が、消費者に売れた(消化した)時点で仕入れたことになる取引形態。売り上げ仕入れ(売り仕)とも呼ばれます。日本の百貨店では主流で、売れるまではアパレルメーカーや卸業者に商品の所有権があり、品揃えや販売価格にも主導権を持ちます。小売店は在庫リスクがないが、買い取り仕入れに比べ利益率は低くなります。景気低迷によるアパレルメーカー側の出店抑制などで、思うように商品調達が出来ない百貨店も増えており、消化仕入れでも販売は百貨店社員が担うケースや、賃貸借契約、フランチャイズ契約など形態が多様化してきています。

「自主編集売り場」 百貨店が自ら発注して販売

百貨店が自ら商品を発注して販売する売り場のこと。例えば、三越伊勢丹グループの「リ・スタイル」や阪急うめだ本店の「D・エディット」など。百貨店は同質化を防ぐため、複数のテイストや年齢軸で開発を進め、主要大型店から郊外店に派生する動きもあります。百貨店で大半を占める消化仕入れは、アパレルメーカーが品揃えや価格決定の主導権を握るのに対し、自主編集売り場は買い取りが基本で百貨店が主体となります。ただし、百貨店が自ら販売員を配置する場合と、アパレルメーカーが派遣する場合があり、百貨店がどこまでリスクを負うかは様々です。

百貨店業界の現状は?

百貨店の総売上高は91年の9兆7000億円をピークに縮小が始まり、2016年は6兆円を割り込みました。ピーク時の3分の2の市場規模になっているのです。

昨年は2年連続で前年実績を下回りました。インバウンド(訪日外国人)需要の減速や好調だった高額品の販売に陰りが見えました。ただ、最大の要因は売り上げ構成比で3割を占める衣料品が5・8%減少したためです。特に婦人服は中間層を取り込めず、6・3%減の1兆2122億円でした。婦人服がピークだった98年の2兆2751億円に比べて1兆円超の落ち込みとなりました。

ECなどとの競合激化やモノ以外への興味関心が広がるなかで、「価値と価格のバランスを捉えきれていない。将来の中心顧客になる20代の客離れも大きい」(日本百貨店協会)という構造問題が浮き彫りになりました。地方・郊外店は売り上げ減が続いており、今後も中間層マーケットの落ち込みが避けられません。

百貨店は現状にどう対応している?

前述の通り、90年代以降の売り上げ不振が続いたことで、人員削減による利益確保やフロアの一部の売り場をファストファッションやユニクロなどに「場貸し」することでしのぐ動きも百貨店業界には起こっています。上記「百貨店とSCの違い」で説明したことと逆行し、不動産賃貸業に近いビジネスを始めている百貨店もあるということです。限られた人員や投資で確実に売り上げを取りたいとの思惑に加え、マーケティング力も低下し、商品やアパレルブランドが同質化、結果として販売力が低下し、さらに売り上げが減るという悪循環に陥っている側面も否めません。

こうした状況から脱却しようとする個別の企業努力も一方では見られます。対面販売を軸とする独自の売り場環境をさらに強化する改装に踏み切る百貨店も都心ではありますし、外商など他の小売業にはない上顧客向けの特別なサービスには、今後も増え続けるインバウンド需要にユニークな特徴として訴求できる可能性はあります。

百貨店の「仕入れ」から「販売」の手法は前述した「消化仕入れ」と言って、売り場で売れた時点で仕入れに計上する手法が主体ですが、利益率が低いため、買い取りなど収益性の高い取引への転換も課題です。ただ、百貨店の付加価値は商品を買う場所としての機能だけではなく、大型小売業ならではの売り場空間で、消費者がそこで過ごす時間を満喫できることにあります。ニーズが変化し、構造転換を迫られても、原点の魅力を維持する努力がますます重要になっています。

今後の百貨店業界はどうなる?

Kametaro / Shutterstock.com

日本の百貨店は欧米に比べて生活文化の提案力が強く、地域での存在感が大きいのが特徴です。さらに店頭、外商、友の会、カード、ECなど顧客との接点も多様です。問題は、百貨店が人件費、地代・家賃などの面で高コスト構造の小売業だということです。その打開策の一つが百貨店が撤退・縮小した商品分野に大型専門店を導入することです。集客の拠点にするとともに、低コスト運営で利益確保するのが狙いです。

適正規模の売り場と人員にするためのテナント導入は、高止まりする運営コストを引き下げる上で大きな効果があります。ただ、単純に自営部分を縮小すれば、マーケティング力が低下し、顧客動向の分析や把握が弱まり、商品の同質化、販売力の低下が避けられません。

これまでもそうでしたが、今後も百貨店にとっての重点は、MDの差異化や質の高いサービスを提供することです。他店にはない独自性、希少性のあるアパレル商品、信頼、安心できる販売員による接客、来店したくなるコト企画、楽しみながら買い物ができる環境など、リアル店舗の優位性は少なくありません。日本の産地と取り組んだ独自商品の開発もその一つです。

店舗、外商、友の会、カード、ECなど全ての接点で、顧客との関係性を深めることができるのも百貨店の強みです。構造改革を迫られる中、より生活者に接近し、顧客起点のMD、サービス、環境の再構築が生き残りには不可欠と言えます。

まとめ

今回は百貨店業界の現状と今後を解説しました。アパレル業界において重要な販路である百貨店ですが、多様化する消費者のニーズに対応し、魅力ある売り場であり続けるには様々な課題があることも事実。改めて若い世代の来店を促すための売り場作りを実施する百貨店も出てきており、今後の動向にも注目です。

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