【繊研新聞より】播州織若手デザイナーに聞く 

  • 2020年01月10日更新
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「同世代で何か面白いことをやりたい」と話す鬼塚さん(左)と宮本さん

先染め織物で知られる兵庫県西脇市を中心とした播州織産地。官民一体となって、製品化とファッションを志す若者の移住促進を狙った西脇ファッション都市構想により、この間、多くの若者が産地企業に就職、活躍している。産元商社の播で、ストールブランド「ファボリ」の立ち上げに携わった鬼塚創さんと、産元商社の丸萬で製品ブランド「ポルス」を手掛ける宮本祐子さん。ともに東京から西脇にやってきた二人に話を聞いた。

東京と違うところで勝負

――産地に来てどのような仕事に携わっているのか。

宮本 ポルスでは洋服のデザインやパターンを担当し、縫製工場も一から開拓、物作りの基盤を作ってきました。私はもともと東京のアパレル企業で、今日引いているパターンが2週間後には店頭に並ぶような速いサイクルの中で働いていました。生地は在庫のあるものだけを使うやり方でした。

産地では生地の密度から何から自由に作れる部分はありますね。ただ、市場についていくスピード感という部分では難しさを感じます。東京と同じような流行を求める物作りでは勝てません。違うところ、製品自体がいいかどうかで戦っていかなければいけない実感があります。

鬼塚 西脇に来て4年目になります。デザイナーとしてストールブランドの開発に携わるなど、新卒1年目から東京にいたらできないような経験ができたのは良かったと思います。19年にはファボリがグッドデザイン賞を受賞しました。上下左右のグラデーションを重ねた先染めストールで、プリントでは表現できない奥行き、立体感があります。織物を作ってきた歴史、技術に価値があり、自分たちが普通に当たり前にやっていることを突き詰めると特別なものができるという点が評価されたと思います。

――産地ならではの物作りのしやすさは。

宮本 以前は誰が作っている生地かもわかりませんでしたが、産地では生地など物を作っている人の距離が近く、色々と相談できるのはメリットでしょう。コワーキング「コンセント」の存在も大きいです。色々なセミナーがあり、若い人が集まり、そこで同世代の同業の友達ができて、仕事が続けやすくなった部分もあります。身近な同世代の存在は大きいです。働き方も、私自身は都会で一杯いっぱいになりながら生活しているよりも、のびのびやれている部分が多いですね。

鬼塚 専門の職人と話をして、こういうことならできるんじゃないかとか、産地の経験を組み合わせて、形にすることができるのが強みでしょう。デザイナーが上からこうしてくれというより、下から一緒に積み上げて物作りをするのが、産地にいる意味だと思います。

量と付加価値のバランス

――産地はこれからも変わっていくのか。

宮本 播州織の価値を高めるためには、先染めならではのはっきりした良さを言えないと、店頭の売り子さんも売りづらい部分があるのではないでしょうか。産地の他社のことはわかりませんが、最近では新しい事業について理解してくれる人も増えてきました。色々と動きやすくなってきた部分は多いと思います。

鬼塚 ストール作りは工場、機屋さんに頼みに行くところから始まります。機屋さんの顔が浮かび、環境が厳しいから淘汰(とうた)されてもしょうがないよねとは言えません。量を確保するのも大切ですし、播州織というカテゴリーの価値を上げていくものを作ることも大事です。大量に安価で短納期を強みにこれまで産地は成長してきましたが、これ以上の「もっと安くもっと短納期」は難しいのではないでしょうか。価値を高める部分と量を確保する部分をバランスを取って交互に積み重ねていくしかないと思います。

個人的には3年間で結果を残せなかった部分もあったのかなと思い、悔しさもあります。ただ、生地や製品を作れる人がこれだけ集まって、物作りのハードルが低くなってきました。会社は違うのですが、西脇に集まった同世代の人同士でいつか何かをできたらいいなと思っています。(三冨裕騎)

<2019年11月06日繊研新聞より掲載>

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