【特集】 「変わるファッション業界と就活。」 Topic#2 売り手から一変、買い手市場に 22年卒も厳しく

  • 2021年03月29日更新
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ファッション業界の新卒採用で企業の求人が大きく変わり、就職活動をする学生にとって厳しい状況が続いている。コロナ禍による経営の悪化で、採用市場は急速に縮小。3月に卒業予定の学生の内定率が3~5割という服飾系専門学校も多く、昨春までの売り手市場から買い手市場に一変。22年卒の採用も前年より減らす企業が大半を占め、計画が定まらず採用日程を遅らせるなど消極的な姿勢が目立ち、「就職氷河期以上に悪い状況になる」と危惧する声も出ている。

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低迷が長期化

大手就職サイトでは昨年4月ごろ、ファッション業界の説明会の参加募集や予約可能な企業が大幅に減少。4、5月の採用凍結後、選考途中で採用を中止する企業が続出し、一気に買い手市場に転換した。大手でも期初計画より採用数を1ケタ減らしたり、欠員補充だけとした会社がほとんど。19年夏から選考を始めて昨年3月までに内定を出せた企業もあるが、最終面接まで進めて秋になってゼロ採用で終わったり、内定取り消しや倒産に至った事例もある。

有力服飾系専門学校でも「1月になっても求人件数は例年の6割強、求人数で7割の水準」。他校でも「求人数は前年の3~4割で学生数より少ない。知名度の低い企業でも、求人があると応募者が殺到して厳しい。中途採用の求人も激減して質の高い経験者が採れるため、中途採用を優先する企業もある」という。

昨年2月まで活発だった就活は大きく変わった(「センケンjobフェス」会場)

遠のく希望職種

服飾系の学校では、元々少ないデザイナーなど技術職の求人が最も減少している。募集の多かった販売職も、店舗閉鎖などの調整弁になって激減した。総合職など先行投資型の職種も人数を絞る一方、ECを支える人材の需要は強い。業種別に見ると、アウトドアやスポーツアパレル、リユース企業は採用意欲が高い。

政府の発表では、大学生の昨年10月1日時点の就職内定率は69・8%、前年同期比7ポイント減で、リーマンショック後の09年に次ぐ下落幅だった。同じ調査で専門学校生は5割を切り、内定率45・5%、14・9ポイントの大幅減となり、さらに厳しい状況となっている。各校の内定率は、前出の専門学校が「1月で例年の約60%の半分くらい」、前年は1月末に100%だった有力校で「やっと60~70%」。ある大学で50%、その他の専門学校は30~50%と大学より苦戦し、特に本社が集まる東京は厳しい。

「物作り系より求人は多いのに、流通系の方が内定率が低い。志望職種や企業にこだわる人ほど決まりにくい」「志望企業の募集がないため1年待つ構えの学生もいる」「ファッションにこだわると厳しい」などの声が聞かれ、一部の専門学校では「例年に比べ、在学中から起業したり、独自ブランドを立ち上げる学生が増えている」という。飲食や航空・旅行に次いでファッションは就職が難しい業界となっている。

大学生と専門学校生の内定率推移 ※厚生労働省と文部科学省共同調査

22年卒はさらに厳しく?

22年卒採用に向けても、リストラ中など経営難の状況が続くファッション企業の採用意欲は大きく減退している。既に採用中止を決めた人気企業も目立ち、21年卒以上に採用市場が縮小しそう。採用早期化の流れが止まり、短期インターンシップなど3月より前のプレ採用活動を行う企業は大幅に減少。各校でオンライン学内セミナーが1月下旬から、企業の合同説明会もオンラインや対面で2月に始まるが、出展企業の集まりが悪く、規模の縮小や中止が目立つ。

3月1日からエントリーが始まる大手就職サイトの就職ナビ掲載企業も、他業界の前年比1~2割減に対し、ファッション業界は大幅に減る見通し。新卒採用の予算や人員を削り、自社ホームページで少人数を募集したり、経費を抑えた採用活動に変える企業が増えそうだ。早期退職募集中で採用計画が決められず採用時期を遅らせたり、通年採用の導入など採用手法も多様化。求める人材は「会社の将来を考えられる人」「先々は店舗を運営する力のある人」「専門性と幅広い仕事の対応力を持つ人」など、量より質を求め、厳選して採用する流れが強まっている。

異業種も選択肢に

企業の変化に対応して就活も変更を迫られ、各校は21年卒と22年卒の学生に、間口を広げて就職先を探すように指導中だ。「22年卒の学生には、例年より早めに昨秋からオンライン中心に就活指導を開始した。就職氷河期クラスの厳しい現状を示し、早めに動き始めるよう伝えている」「服飾系の学校=ファッション業界という前提を崩し、求人倍率0・5の販売職より介護など求人の多い業種、学んだことや自分を生かせるファッション以外の仕事も紹介する方針に転換。興味や関心を広げられるよう支援し、異業種や就職ナビに載っていない会社も紹介している」「志望企業以外も幅広く受け、就職して仕事の基礎を身につけてからファッション業界や、第1志望の会社に転職する道もある。臨機応変に動いてほしい」と助言している。

ある服飾系の学校の就職指導担当者は「22年卒は生半可な指導では就職できないので支援内容を変えた。総合大学と同じように2月までに自己分析と業界や企業研究、ESの書き方の練習などを終え、オンライン主体で簡単なので様々な業界の合同説明会や短期インターンシップに参加するように勧めている。3月に志望企業の募集の有無を確認後、柔軟に動ける準備が必要」と話す。4月以降に採用、6月頃から選考を始める企業も増えそうで、就活の長期化が懸念される。なかなか内定が出なくても心が折れないようにメリハリをつけながら動き続け、勝ち残ってほしいと指導する学校もあり、厳しい就職戦線が続きそうだ。

採用に消極的な企業が増え、就職活動の長期化が続きそうだ

​繊研新聞記者・河邑陽子

(センケンjob新卒'22-'23BOOKより)

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