モンクレール、バブアーを育てた八木通商の社長が語る、ラグジュアリービジネス成功への戦略

  • 2018年05月01日更新
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グローバル・マーケティング&マーチャンダイジングを掲げ、新たなライフスタイルを創造してきた八木通商。祖業であるテキスタイル輸出から、ラグジュアリーブランドのインポート、欧州でのブランドホルダーへの出資、買収とビジネスモデルを進化させながら、グローバルな視点で事業機会を切り開いています。ここ数年は欧州での投資を活発化させる一方、米国、アジアでの販売、ECによる販売を強めるなど、成長への歩みを加速しています。八木社長にこれからの戦略について聞きました。

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八木雄三(やぎ・ゆうぞう) 1941年10月26日 兵庫県生まれ。米国ミシガン州立大学経営大学院MBA取得。
64年八木通商入社、 71年 欧米からのファッション製品輸入事業を社内創業、 86年 から現職。
93年 米国ミシガン州立大学客員教授に就任、 2004年 仏国家功労勲章オフィシエ、 11年英名誉大英勲章OBE、16年 伊共和国国家功労勲章グランデウフィチャーレを受章。76 歳。

時代が変わっても基本は変わらない

―今の環境認識は。

ファッションビジネスの歴史にはいくつかのターニングポイントがありましたが、今後をどう見るかという点でECは最重要です。当社が取り扱うブランドは、ラグジュアリーとアクセシブル・ラグジュアリーです。これまで、ECを特に積極化させてきませんでしたが、八木通商らしい仕組みをどう構築するかは大きな課題です。わが社にふさわしいプラットホームを作ることが大切です。時代が変わっても、オリジナリティーの有るものを発見し、特別に良い物を作り、ブランディングをして、グローバル市場に投入する、という基本は変わりません。人は、値段が高くても、品質の優れた商品をいつまでも大事にします。またそのブランドに共鳴した消費者はブランドを大事にしますから。

八木通商の歩みを振り返ると、原料、テキスタイルの輸出が祖業ですが、1971年、変動相場制に移行し、為替が大きく変動した時期に、輸出主体では将来がないと判断、いち早くインポートビジネスに大きく舵を切りました。71年8月にはイタリア・ミラノに事務所を開設し、欧州ブランドの輸入販売に着手します。こうして、高級品に絞ったファッション製品のインポートビジネスを社内創業しました。

多くの商社はプラザ合意( 85年)に伴う円高を契機に輸入へシフトするのですが、当社はそれらに先駆けて、インポートビジネスがこの先益々伸長するとの予見をし、70年代始めにこれを強化したのです。おかげで競合企業がインポートを本格化させる頃には、すでに欧州の生地やプリントのメーカー、織物のコンバーター、靴、バッグ、ガーメントのメーカー群、ブランドホルダーとの関係を作り上げていました。これらの中で特別に良い製品を作るメーカーには、時には投資し、関係を強化していった結果、今でも一番のアセットになっています。

夢に向かって進む

―重視する点、目指していることは。

70年代にインポートビジネスに着手した時から重視してきたのが、マーケティング、そして新たなライフスタイルを創造すること。ライフスタイルという言葉は今ほど一般的ではありませんでしたが、「モンクレール」のダウンジャケットはまさに新たなライフスタイルを生み出したと言えるのではないでしょうか。

八木通商が今、目指しているのは、ラグジュアリー分野で欧州の一流企業を創るということです。この2年半、欧州で約100億円を投資してきました。ラグジュアリービジネスを成功させるためには、莫大な資金が必要です。一等地にショップをオープンすることもですし、優れたデザイナーを招へいすることもです。必要であれば、ファンドと組むことも検討しています。欧州での成功は簡単ではありませんが、夢に向かって進んでいきます。

販売においては、欧州だけでなく、アジアでどうやってラグジュアリービジネスを広げるかも大きなミッションです。アジアといっても色々な国・地域がありますが、最終的には中国で成功させることが目標になってきます。何と言っても、八木通商は他商社に先駆けて日中友好商社になったという歴史がありますし、ぜひ中国で成功させたいですね。中国市場はアクセシブル・ラグジュアリーで成功すると莫大なリターンが得られると確信しています。欧州、アジアにとどまらず、「マッキントッシュ」の旗艦店をニューヨークにオープンさせた米国でも成功させたいですね。

イメージがはっきり見えている

―ブランド育成のノウハウが豊富だ。

具体的なブランドで言うと、国内で「モンクレール」、「バブアー」の好調が続いていますが、英国ブランド「J&Mデヴィッドソン」が育ってきました。優れたプロダクト、効果的なマーケティング、グローバル市場に供給する、という基本に則り成長しています。「J&Mデヴィッドソン」は当初、本国に76%出資したのですが、今は100%出資です。グローバル・マーケティング&マーチャンダイジングを充実させて、さらに評価を高めていきます。徐々にブランドができあがっていく、そんなイメージがはっきり見えています。ノーブルで洗練されたミラノのライフスタイルブランド「トラサルディ」や、独占輸入販売権を取得したイタリアのバッグブランド「ジャンニ キアリーニ」も有望です。同じバッグでも「J&Mデヴィッドソン」とは価格帯が異なります。

レザーグッズのブランド、「J&M デヴィッドソン」の青山旗艦店

「J&M デヴィッドソン」

当社はブランドビジネスのイメージが強いかもしれませんが、原料、テキスタイルの知見も豊富です。私自身、中近東やアフリカなど世界中を渡り歩き、原料やテキスタイルを販売していた経験がありますし、米国ファッション業界でも八木通商のテキスタイルは名が知られています。祖業ですし、思い入れも強いです。特にヨーロッパのラグジュアリーメゾン向けビジネスが増加しており、更にマーチャンダイジングを強化しています。

メイド・イン・フィレンツェのレザーバッグと小物のブランド「ジャンニ キアリーニ」

”2021年トピックス” 夢の実現に向けて奮闘中

欧州でラグジュアリービジネスを成功させるという夢はまだ途上。今も人材、資金を投入していますが、その夢に向けて進んでいるでしょう。3年後を見通す上で、1つ関心があるのが、ラグジュアリーブランドのECがどれくらい成長しているか。グローバルなラグジュアリー企業でも、EC比率はそんなに高くありません。各社が力を入れ始めたところだけに、今後どれだけ伸びるかには大きな関心があります。ただ、ラグジュアリーだけでは会社は成長しません。「ジャンニ キアリーニ」のようなコンテンポラリー・ラグジュアリーもしっかり育てたいですね。

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