八木通商の社長インタビュー マッキントッシュ、モンクレールを育てた商社の世界戦略とは

  • 2017年04月08日更新
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 「バブアー」「マッキントッシュ」「モンクレール」など数々の一流ブランドを扱う繊維専門商社の八木通商。同社は今、世界戦略を加速しようとしています。欧米のブランドに出資し、大きく育て、世界中に広げていく戦略です。従来のインポート事業に加え、商品を見ればブランド名がわかるような特徴的なブランドだけを集めたファッショングループを志向。これまでの経験を活かし、欧米で、アジアでどのような戦略を描くのか、八木雄三社長に聞きました。 

目次

⒈ 代表取締役社長 八木 雄三氏インタビュー
⒉ 記者メモ
⒊ 八木通商の歴史とは?
⒋ ビジネスパートナーが語る八木通商
⒌ 八木通商の最新ニュース

代表取締役社長 八木 雄三氏インタビュー

八木通商株式会社  代表取締役社長 八木 雄三氏

胸に響くことがブランドの条件

 今は、商品にオリジナリティがあって、しかも世界的なブランドであることなどすべての条件が揃わないと売れない時代です。例えば「バブアー(Barbour)」のオイルドジャケット、「マッキントッシュ(Mackintosh)」のゴム引きコート。この分野ではこれ、と言われる商品で、消費者がそのブランドを持つことに満足を感じるものでないと売れない。それほど難しい時代です。日本にはたくさんのアパレルブランドがありますがアイデンティティが薄い。もっと濃く、もっと深くオリジナリティを追求しないと、選択に迷う消費者の背中を押せない。消費者の胸に響かなければブランドじゃないんです。

ユニークなブランド群を育てる

目指すのはオリジナリティがあってユニークなブランドだけを集めたファッショングループです。すぐれたプロダクトを持つ欧米ブランドに出資して磨き上げ、欧米、アジアに広げるグローバル・マーケティング&マーチャンダイジングを進めます。

トラディショナルウェザーウェアの青山旗艦店

 ブランドを育てる手法も変わってきています。これまでは優れたクラフトを持つメーカーを発掘し、マーケティングしながら商品を磨き上げてきました。そのメーカーが日本や欧米に進出する際にはそのサポートや、出資も行いました。これをもう一段進めます。ブランドを大きく育てるには旗艦店を欧米、アジアの世界有数の立地に開き、ショールームを作って卸販売を広げるなど大きな投資が必要です。そのためにはキャッシュが必要だということで、前期には不動産や欧州のブランドを売却して147億円の純利益を出しました。

 自己資金による投資だけでなく、これからは機関投資家から資金を集めてユニークなブランド群の保有を拡大します。弊社が持つファッションビジネスのノウハウをつぎ込んでプロダクトを磨き上げ、収益性を高めた上で売却することもあるでしょう。ファッション産業で中小ファンドが成功しないのはブランドを育てることができないからです。ここに大きなチャンスがあります。わが社が持つブランドを育てるノウハウが活かせます。すでに実績もあり、様々なオファーが寄せられています。

アジアへのビジネスを推進

 アジアでの事業拡大も本格化します。先日出資したフランスの高級ヘアアクセサリーブランド「アレクサンドル ドゥ パリ(Alexandre de Paris)」は日本、中国、香港で出店します。すでに、英国の革製品とウェアの「J&M デヴィッドソン(J&M Davidson)」は韓国、台湾で卸売りがスタートしました。台湾では新たに販売会社を立ち上げる計画です。

J&M デヴィッドソンのロンドン店

 「トラディショナルウェザーウェア(Traditional Weatherwear)」のようにクリエイション、プロダクト、マーケティング、リテイル全てに弊社が関わる取り組みもあります。英国本社と共同企画し、当社の中国工場で生産するなど全ての工程に関わることで、高感度、高品質の商品を適正価格で提供できています。こうした取り組みはもっと増やせるはずです。

あとは元々強みを持っていた素材コレクションの充実。日本や中国で開発した生地を欧米に向けて販売する取り組みを進めていますが、もっと強めなければなりません。一番いいのは大手企業のコア商品のコアマテリアルに採用されること。こんな製品がこれから売れるから、この素材を使ってはどうですかと先を見越した開発と提案に力をいれます。

欧州にも軸足を置く会社へ

 これから進めようとする世界戦略には、優秀な人材が欠かせません。スープリームス インコーポレーテッド、スプレンダーズ&カンパニー、マッキントッシュ ジャパン、モンクレール ジャパン、ヘレンカミンスキー ジャパンなど多くの子会社を持っていますので、力のある社員に経営を任せ、世界で通用する人材を育てています。

 アジアで事業展開するには日本からの采配で足りますが、欧州の企業を運営するとなるとそうはいかない。グループ企業となったブランド会社を指導するのにEメールやTV会議だけでは足りません。現地で優秀な人を雇っても、豊富な経験とロジック、加えて大変な迫力で相手を圧倒しないと使いこなせません。すぐには無理ですが、世界でグローバル・マーチャンダイジング&マーケティングを進めていくために、いずれは本部機能の半分は欧州、半分は日本という体制が必要だと考えています。

記者メモ

 連結年商400億円と繊維専門商社の中でも規模は大きくはないが、惚れ込んだブランドにしか触手を動かさないのが八木通商だ。八木雄三社長が語ったキーワードで印象的だったのは、「The product talks itself」。一点一点の製品自体がブランドを物語ることを意味している。はじめは有名ではなくても製品があまりに素晴らしいので月日が経ってブランドになった。そんなダイヤの原石を見つけ出し、サポートし、信頼関係を築く。そしてブランドを磨き、マーケティングをする。このスタンスは八木通商の中核であり、今後も変わることはないだろう。

 優秀な人材の条件として八木社長が挙げるのが「時代を先読みする力」。70年代、ダウンジャケットやスニーカーに社長が注目し始めた頃、他社は見向きもしなかった。しかし常にユニークなアイテムを扱い続けたことが後に「モンクレール」の成功に結びつく。「何事もすぐには成就しない。ライフスタイルの変化を先取りし、チャレンジし続ける」と感性とロジックの重要性を説く。

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