【アパレル業界・基礎講座】 川上編① 素材って何だろう?

  • 2018年02月16日更新
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衣料品は、糸からテキスタイル、縫製まで、たくさんのプロセスを踏んで作られます。ファッション・アパレル業界では、原料から生地までの流れが「川上」と呼ばれます。今回は、その川上業界を掘り下げていきます。

【関連記事】アパレル業界の「川上」を知ろう!服作りのスタート地点

ファッションの表現支える大事な要素

[Q] そもそも、衣料品の素材って何ですか?

[A] 川上の指すところと同じです。

原料から生まれた〝繊維〟、それを紡いだり、撚ったりして作る〝糸〟、糸を織ったり、編んだりした〝生地〟。〝素材〟はそれらに広義的に使われています。

あまりピンとこないかもしれませんが、素材は衣料品の完成度を左右する重要な要素です。

例えば、ドレープが流れるエレガントなドレスを思い浮かべてください。美しく仕上げるにはデザイン、パターン、縫製力…どれも欠かせませんが、使う生地にしなやかさがなければ表現できません。生地の柔らかさや重さ、はたまた光沢感とその特性によって、印象はずいぶん変わってきますよね。

デザイナーコレクションはシーズンの半年前に行われますが、生地は1年以上前にトレンドを発信しています。フランスのプルミエール・ヴィジョン・パリという見本市がその代表です。約60カ国1800社が出展し、120カ国以上の国からバイヤーが来場します。素材のバイイングだけでなく、情報交流やインスピレーションを得る場にもなっています。

有力ブランドのバイヤーが新たな素材やデザインのヒントを探しに訪れるプルミエール・ヴィジョン・パリ(17年9月に開かれた18~19年秋冬展のトレンドフォーラム、新村真理写す)

素材の進化が変えるファッションアイテム

[Q] 素材っていろんな種類があるんですか?

[A] 素材は、人々の暮らしの変化とともにそのバリエーションを増やしてきました。

ここでは、代表的な素材を見てみましょう。

上の表の通り、素材は天然繊維と化学繊維に大別されます。

天然繊維は、その名の通り、天然の植物や動物の毛などを使用したものです。この中で最も生産されているのは、綿です。用途が幅広く、年間通じて最も身近にある繊維といえます。ウールは、その保温性から冬の主役というイメージがあるかもしれませんが、実は吸放性が高く、登山など本格的なアウトドアやスポーツのインナーにも採用されているんですよ。

一方、化学繊維は、人の手で化学的に作られています。化学繊維はさらに、原料の違いによって、合成繊維や再生繊維などに分けられます。

合繊は、石油を原料に、化学的に合成された物質から作られた繊維です。ポリエステル、アクリル、ナイロンを3大合繊と呼びます。

天然繊維に親しみを感じる人が多いかもしれませんが、実は世界で一番生産されている繊維は、ポリエステルなんです(下表)。

作りやすく、原料も比較的安価で、加工もしやすいので、用途に応じて物性や機能を変化させながら、衣料品以外にも、カーテンやカーペット、車の内装、傘地と暮らしの中のあらゆるところで使われています。

その汎用性の高さで、衣料品でも様々な分野で活躍しています。例えば、市場に定着して久しいユニクロの「ヒートテック」。後に登場しますが、合繊メーカーの東レとタッグを組んで素材を開発し、新たな市場を確立しました。これもポリエステルを主体とした素材なんです。

ここ数年では、合繊を使った紳士スーツが話題ですね。しわになりにくい、よく伸びるといった着やすさが若い世代を中心に支持され、販売が伸びています。これもポリエステルを使ったものがたくさん出回っています。かつては、紳士スーツの素材はウールが圧倒的でした。これを覆したのは、若者の消費志向の変化もありますが、ウールと見間違うようなポリエステルの開発が進んだことが大きいです。

様々な工程を経て用途に合った特性に

[Q]どうやって洋服になるんですか?

[A]素材の元となるものは、ふわふわのわただったり、どろどろした液体だったりします。そこから様々な工程を経て、みなさんが手にする製品になっていきます。ざっくりと流れを見てみましょう。

糸の作り方は、素材によって大きく異なります。天然繊維を糸にする製法を、紡績といいます。わたの塊から繊維を引き伸ばし、積み重ねて糸にすることです。例えば、綿は3センチ前後の短い繊維を撚ったり、束ねたりして1本の糸にしていきます。

化学繊維は、熱や溶剤で溶かした原料を、穴がたくさん開いたじょうろのような口から押し出し、巻き取って糸にする方法が主です。ところてんを押し出す様子をイメージするとわかりやすいかもしれません。これを紡糸といいます。ただ、これで終わりではありません。こうしてできた1本の糸を何本も撚ることで、衣料品に使われる糸になります。

また、紡糸した糸を短くカットして使うこともあります。この場合は、天然繊維と同様に紡績して糸にします。ウールや綿のようなナチュラルな風合いに近づけられます。

この糸を平面にしていくのが、織り、編みの工程です。織りは、大きくとらえて糸をタテとヨコに交差させて作るものです。編みは、基本的に1本の糸でループを作り、それを連鎖させて、生地を作っていきます。製法は大きく三つ。セーターに代表されるのが横編みですが、他にも丸編み、経編みがあって、機械も異なります。

生地ができたら、今度はこれを染める染色加工工程に移ります。生地に色を付けるだけでなく、水をはじくなどの機能を与えたり、物性を整えたりします。生地の仕上がりを決める大事な工程です。

世界のブランドに愛される日本素材

[Q]メイド・イン・ジャパンってよく聞くけど、日本の素材もすごいの?

[A]例えば、先ほど話に出たPVパリにはかれこれ10年以上、日本企業が出展しています。これを足掛かりに海外の販路を開き、多くのラグジュアリーブランドに愛用されています。小さな機屋でも、品質の高さや繊細さなどが理解されており、存在感を発揮しています。

今後、日本素材への注目度がますます高まると期待されているのが、サステイナビリティー(持続可能性)の分野です。「グッチ」のファーフリー宣言に代表されるように、欧米では、スポーツやアウトドアブランドだけでなく、ファッションでも、サステイナブルな物作りに切り替える動きが活発です。

海外では、オーガニックコットンやオーガニックリネン、リサイクルウールと天然繊維が先行していますが、日本は化学繊維でも多彩な提案が揃うのが強みといえます。

例えば、ポリエステルのエコ素材では、原料のPETをリサイクルしたものが一般的ですが、東レでは一部を植物由来に置き換えたものが販売されていますし、100%植物由来のタイプも開発されています。

再生繊維のキュプラも注目を浴びています。本来は捨てられてしまう綿の種の周りのうぶ毛(コットンリンター)を100%原料にした繊維で、世界で旭化成だけが生産しています。

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