【アパレル業界・基礎講座】小売り① インバウンド需要が旺盛な「百貨店」を学ぼう!

  • 2018年07月27日更新
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今回から小売り編をお送りします。まずは百貨店とGMS(総合小売業)についてお話します。

百貨店は中~高級な商品を売る店として、GMSは日常に使う商品を買う場所として、いずれも「昭和」の時代に隆盛を極めましたが、近年、売り上げ規模は縮小の一途をたどっています。

それぞれの業種としての特徴と、両者を取り巻く環境の変化について、見ていきましょう。

Q.百貨店はこの一年、インバウンド(訪日外国人)による押し上げ効果が目立っています。

A.インバウンドの売り上げは伸ばしています。観光庁のまとめでは、17年の訪日客による消費額は前年比で約18%増の4兆4162億円で過去最高となりました。16年度は中国政府の関税の引き上げと円高に振れた為替の影響で爆買いが一服し、売上高が2.6%増と足踏みしましたが、再び急増しました。百貨店の免税売上高は関西圏の伸びが目立っており、西高東低が鮮明です。関西国際空港に格安航空会社(LCC)専用ターミナルが17年1月開業し、中国を中心とした訪日客による消費の底上げにつながっています。

高島屋の免税売上高は前期比42%増の487億円と大きく伸びました。このうち約半分の240億円を大阪店が占めました。大阪店の全館売り上げは8.8%増の1414億円で、同社の一番店となりました。大丸松坂屋百貨店は免税売上高が63%増の479億円でした。大丸心斎橋店は71%増の252億円で、同店の売上高に占める免税売上高の比率は30%に達しました。

さらに関西圏だけでなく、札幌や福岡の百貨店でも高い伸びを示しており、需要の高い化粧品を含む雑貨の売り上げは各社2ケタ増となりました。インバウンドの追い風は地方の大都市まで波及しています。こうした需要をいかに取り込むかが重要になっています。

Q.百貨店の売上高は復調の傾向にあるのですか?

A.いいえ、厳しい状況が続いています。全国百貨店の17年売上高は前年比0.1%増の5兆9532億円で3年ぶりに前年実績を上回りましたが、2年連続で6兆円割れを強いられました。百貨店の総売上高は91年の9兆7000億円をピークに縮小が始まり、16年は6兆円を割り込みました。ピーク時の3分の2の市場規模になっているのです。

最大の要因は売り上げ構成比で3割を占める衣料品が2.2%減少したためです。特に婦人服は中間層を取り込めず、2.8%減の1兆1703億円でした。婦人服がピークだった98年の2兆2751億円に比べて約1兆円の規模縮小になります。

ECなどとの競合激化やモノ以外への興味関心が広がるなかで、「価値と価格のバランスを捉えきれていない。将来の中心顧客になる20代の客離れも大きい」(日本百貨店協会)という構造問題が浮き彫りになりました。地方・郊外店は売り上げ減が続いており、今後も中間層マーケットの落ち込みが避けられません。

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Q.地方・郊外店の閉鎖が続いていますが、百貨店の未来はどうなるのですか?

A.規模縮小は避けられませんが、百貨店は、いつの時代も我々の生活スタイルを変えてきた役割があります。地域での存在感の大きさは変わりありません。小売りとして歴史も長く、店頭、外商、友の会、カードにECなど顧客との接点は多様にあります。問題は顧客基盤やストアロイヤルティーを生かしきれていないことです。

今後の百貨店にとっての重点は、MDの差異化や質の高いサービスを提供することです。他店にはない独自性、希少性のある商品、信頼、安心できる販売員による接客、来店したくなるコト企画、楽しみながら買い物ができる環境など、リアル店舗の優位性は少なくありません。そのためには、デジタル技術の活用や地域との連携による商品、売り方の革新が重要です。

もっとも、成長戦略には投資が必要です。安定的、持続的に利益を出す収益力の向上は欠かせません。大手百貨店では不動産事業を新たな収益源として拡大しています。百貨店の売り上げ、利益が伸び悩む中で、従来の百貨店偏重の事業構造を見直し、収益バランスを最適化するのが狙いです。都市部の好立地にある保有不動産の再開発や店舗周辺の自社・外部物件による賃貸面積の拡大が中心となります。不動産事業は収益への貢献だけでなく、地方・郊外店の構造改革に生かす考えです。

三越伊勢丹グループのテナントリーシングのノウハウを活用し、商業施設を運営する(4月に開業したミーツ国分寺)

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