ファッションキュレーターが語る「ものづくり産地とは?」

  • 2017年06月27日更新
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 毎月一回、木曜日の夜に開催されている、ファッション業界で働きたい学生、 働きたいかもしれない学生とファッション業界をつなぐトークイベント「Fashion y」。

 5月は「ファッションのものづくり産地とは?」というテーマで、株式会社 糸編の代表 宮浦晋哉さんに、自身の活動を通して感じたテキスタイル産地の魅力と現状について語っていただきました。

 宮浦さんは杉野服飾大学を卒業後、「ファッションキュレーター」として日本各地にあるテキスタイル産地を回り工場を訪問してテキスタイルに関する情報を集め、その情報を東京にいるデザイナーやメディアに紹介する活動を行っています。テキスタイル産地の魅力を伝えるため、メディアへの執筆活動以外にもトークショーを行ったり、国内のテキスタイル産地でものづくりを学ぶ「産地の学校」なども開校しています。

テキスタイル産地の魅力を伝えたい

 宮浦さんは大学を卒業後、企業の奨学金を元手にイギリスに留学しました。そこで出会った何人もの現地デザイナーに「日本のテキスタイルは素晴らしい」と言われ、そのデザイナーたちのアトリエにあった日本のテキスタイルのサンプルを見て、日本のテキスタイルの素晴らしさを知ったそうです。

 留学中に国内外で有名な機屋だった八王子の「みやしん」の廃業を知り、「日本の工場・職人さんには技術はあるのに廃業してしまうのか」と驚き、帰国時にみやしんの工場を訪れたそうです。みやしんを訪れた際に「テキスタイルに興味があるなら産地を回ればいいのではないか」と言われたことをきっかけに、3か月ほど掛けて全国のテキスタイル産地を回り始めたのだとか。それが今のファッションキュレーターとしての仕事の原点になっています。

 実際に全国各地にあるテキスタイル産地を回るうちに「工場の職人さんの仕事のかっこ良さをもっと広く伝えたい」また「アパレルのデザイナーも産地や工場の情報を求めているのになぜ情報が届いていかないのか」と感じたことで、お互い情報を共有することがあまりないデザイナーと工場の職人さんとを直接結びつける活動を始めました。

 そもそも産地とは、地域ごとに産業集積していることが多く、テキスタイル産地では生地を織ったり、編んだり、加工したりなどいくつかの工程を分業制で行っている場合がほとんどです。その工程ごとに工場があり、「加工工程」だけでも前工程と後工程があるなど様々な分業工程の工場の集積地域が「産地」となっています。全国地図で示した主な産地のほかにも、「この3倍ほどの産地が日本には存在する」と宮浦さんは言います。岩手だと「ホームスパン」、米沢だと「シルク」、山形だと「横編み」といった様に多岐に渡り、地域の特性を生かした産業が生み出されています。

 しかし世の中に一般的に流れている情報だけでは「どこの産地のどの工場がどんな特性を持っているかと言った情報は広まりづらい」と言います。そんな現状を打開するため、全国の工場をリサーチし、職人さんの技術とデザイナーのアイデアをかけ合わせながら「キュレーション」しものづくりをフォローする、それが宮浦さんのお仕事です。

 

工場とデザイナーが直接やり取りすることの大切さ

 ファッション業界では、実際にデザイナーと工場が直接やりとりをすることはあまりありません。OEM(相手先ブランドによる生産)会社や商社など、両者の間にいくつかの中間企業が入ることが一般的です。

 例えば洋服一つとっても、購入した商品がどこで作られたのかは品質表示を見るとわかりますが、どこの産地でつくられたテキスタイルなのかといった情報はわかりません。ファッション業界全体の傾向として、テキスタイル工場などの川上企業サイドから「○○ブランドにテキスタイルを提供した」などと言った情報を公にすることはほとんどありません。デザイナーに届くまでの間にいくつもの企業を経由している場合には、実はデザイナーですら把握していない、ということもあります。

 宮浦さんが「産地の情報をクローズにしないで、もっとオープンにしていくべきだと思う」と話すように、産地や工場の情報が伝わっていかないと、産地の魅力を多くの人に知ってもらえません。そうなると就活生の皆さんにも伝わらず、ファッション業界でものづくり系の職種を志望する若手が少なくなるのも仕方がありません。

このように、デザイナーと工場の間には、いくつもの中間企業が入ることが多い

 

 また、OEM会社などの中間企業にもそれぞれ得意とする分野が違うので持っている情報にも限りや偏りがあります。さらにいくつもの中間企業を通すことで、正確な依頼品を供給することを優先しリスクを避けてしまい、様々な「出来ない」が増えていってしまいます。

 そして結果的に同じような商品しか生み出されないといった状況が起こってくる可能性があります。そんな現状を間近で見てきた宮浦さんは今年、産地の現状などが学べる「産地の学校」をスタートさせました。ものづくり産業の特性や魅力を生の情報として展開し、就活や転職にも活かせるノウハウを学ぶことが出来る場所となっています。宮浦さんがこうした学校での授業やメディアを通して、産地に関する情報を発信することで、情報が広く届く環境が生み出されます。

 「技術とデザインをつなぎたい。デザイナーにも職人さんにも直接情報を与えられるのはいいことづくめ。直接やり取りすると、お互いの感性がつながって共感でき、お互いにメリットがある。産地とデザイナーが直接やり取りを行い、困ったときにすぐ話し合えることは大きなメリットになる」と宮浦さんは言います。

「産地の学校」の授業の様子

 さらにテキスタイルの加工工程は、少しの時間調整で仕上がりが大きく変わってきます。「加工はデザイナーの感度が一番働くところ。テキスタイルの加工場を見るとおもしろいものを見つけ出せることが多い」と宮浦さんが話す通り、微妙なさじ加減を、デザイナーと職人さんが話し合いながら調整していけるというのは、デザイナーのアウトプットの幅を大きく広げていくはずです。また工場では閑散期に新たなテキスタイルの開発を進めます。その際のアイデアを職人さんが直接デザイナーに話せる環境がつくれればさらにお互いにメリットが生まれます。

 こうして、デザイナーと工場が“初めまして”からテキスタイルの仕上がりまでを密な関係でやり取りしテキスタイルを作り上げることが出来れば、それが良いものづくりへの大きな一歩になっていくはずです。

 

宮浦晋哉さん

1987年千葉県生まれ。2012年に創業「Secori Gallery」は、チーム全体で年間200社以上の生産現場の取材をしながら、産地とファッション間を活動中。

執筆、編集、出版、展示企画、メディア運営、スペース運営、 企画、素材・商品開発、産地活性、プロジェクトマネージメントなどに携わる。2016年名古屋芸術大学特別客員教授。2017年に株式会社糸編を設立。「産地の学校」開校。

宮浦さんに関する情報はこちらから▶▶ものづくりコミュニテイスペース セコリ荘

 

また、6月29日に行われる【Fashion y014】は、TO NINEの吉岡 芳明氏をお招きして、「ファッションビジネスにおけるテクノロジーの活用方法を知ろう!」という内容となっております。 

詳細はこちらから▶▶学生限定勉強会【Fashion y014】ファッションビジネスにおけるテクノロジーの活用方法を知ろう!

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