【リアルなアパレル業界のお仕事を学ぼう!】プレスのお仕事とは?「Fashion y」レポート

  • 2017年03月01日更新
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ファッション・アパレル業界を志望する学生に向けて、実際に業界で活躍されている方々がご自身の『仕事のこと』についてリアルに語るイベント「Fashion y」

第9回はプレスのお仕事について、人気企業・ジュンのプレス、久保まゆみさんにお話いただきました。
 

<<久保まゆみさんプロフィール>>
業界歴約30年の大先輩。広告業界が花形の時代で、デザイン関係での就職を目指して美大に進学。洋服が大好きで、学生時代はビームスでアルバイトを経験されました。(ビームスでは女子アルバイト第1号!)。

卒業後はアパレル会社に入社し、デザインとプレス業務を担当。その後、フランス海外留学を経て「A.P.C」のプレスとしてジュンに入社。結婚・出産を機にフリーランスに転向し、子どもファッション誌の編集長としてエディトリアルも経験。現在は、ジュンに復職し、M&C部部長としてグループブランドのマーケティングとコミュニケーションの領域を統括していらっしゃいます。

http://www.jun.co.jp/

 

今回はお仕事内容はもちろん、宣伝・広報・プロモーション設計といったコミュニケーション全域でのお話も踏まえてお話を伺いました。

 

久保さんのこれまで①:学生時代と海外留学での“文化体験”が今の仕事に通じる

久保さん:私が学生の頃は、ウッディ・アレンを起用した西武百貨店の「おいしい生活」のようなコピーがもてはやされ、広告業界が花形の時代。漠然とデザインの仕事がしたいと思い、美大に入学しました。

その時の海外研修で、ヨーロッパ各地の名画を巡る旅をしました。ルーブル美術館のモナリザ、スペインのサクラダ・ファミリア、ピカソのゲルニカ、イタリアで宗教画など・・・雑誌や本ではなく自分の目で本物に触れたことは、カルチャーショックであり、私にとっての初めての”文化体験”となりました。

卒業後は、アパレルメーカー「ビギ」にデザイナーとして入社。一年目の仕事の中には、スタイリストさんにサンプル貸し出しをするプレスのようなお仕事もありましたが、まだ本格的なビジネスとして成り立っておらず、「雑誌に載って売れればラッキー」くらいの感覚でした。次第にスタイリスト・プレスの仕事が注目されるようにはなりつつありましたね。

デザイナーとして経験を積んだ後は、別のスキルを身に着けたいと思いフランスへ留学。雑誌「エル・ジャポン」のパリ支局で撮影のサポートや編集を経験。あちらで感じたことは、フランス人は誰でもモネやゴダールの話が出来るのに、私は日本文化の知識が足りないためにうまく伝えきれず、悔し思いをしました。帰国後、改めて日本文化を学ばないといけないと感じました。

 

 

久保さんのこれまで②:「A.P.C」のプレス時代、ブランドの考え方について学ぶ

久保さん:帰国後は、パリで人気だった「A.P.C」が日本に入ってくるタイミングでした。「どうしてもA.P.Cのプレスをやりたい」と思い、日本で同ブランドを展開するジュンに入社。ここで、本格的にプレス業務を携わります。A.P.Cのデザイナー、ジャン・トゥイトゥさんは、今のサステイナブルに通じる考え方に近い「マイナスの美学」を洋服作りに取り入れていました。そのアプローチはメゾンのブランディングとは異なっていて、非常に感銘を受けましたし、哲学を取り入れる今のブランディングの考え方にも通じています

その後は、結婚・出産を経てフリーランスに。プレスの仕事はいろんな人から相談を受けることが多く、アドバイスをしているうちに、子供服の雑誌の編集長を務めることになり、今までとは逆の立場で仕事をすることになりました。この頃にリーマンショックが起きて非常に苦労しましたが、色んな経験もできたし、ヘアメイクアップアーティストの加茂克也さんやスタイリストの大森仔佑子さんなど色んな人とのパイプができ、勉強になりました。

 

ジュンのコミュニケーション領域と求められるスキル

久保さん:ジュンは皆さんがご存知のような「ロペ」「アダムエロペ」「メゾンキツネ」「メゾンドリーファー」な多様なファッションブランドをやっていますが、“ライフスタイルイノベーター”を理念に掲げ、ワイナリーやゴルフ場、音楽制作会社、ファッションボードといわれる看板事業なども行っています。

コミュニケーションの領域は、会社によって様々ですがジュングループでは4つに分けています。

  1. プロモーション担当
  2. プレス担当
  3. 販売促進担当
  4. デジタル領域担当

仕事内容と求めれるスキルを簡単に話すと


1)プロモーション担当は、全体のコミュニケーション戦略を考えるプロデューサー的役割を果たします。社内のMDや外部の広告代理店、クリエイティブディレクターなどとやり取りをしながら宣伝広告、販促の全体設計を行い、各チームをまとめるマネジメント要素が強い仕事です。

2)プレス担当はサンプルの貸し出しやプレスリリースを配信し、パブリシティー(記事)を獲得することがメイン。編集、スタイリスト、カメラマンなどクリエイティブチームとの連携が必要で、コミュニケーションのパイプをもつことが重要です。カタログの制作業務もあるのでコーディネート力、ファッションセンスはもちろん、タイトルやキャプションを書くための編集スキルが求められます。

3)販売促進担当は、ブランドの店頭キャンペーンや顧客様向けのフェアを考える仕事。あわせてPOP、チラシ、DMやノベルティの制作も担いますし、店頭のVMDも考えますので、グラフィック感覚が必要です。また、ターゲットのお客様の消費動向を考えるマーケティング的発想が大切です。

4)デジタルプロモーション業務.は、SNSの発信やホームページなどデジタル領域でのプロモーションを考えます。

 

ジュンでのお仕事:「YOU ARE CULTURE.」キャンペーン

久保さん:私たちが行ったコミュニケーションデザインの具体的な例として、「YOU ARE CULTURE.」キャンペーンのCMをご紹介します。

http://youareculture.jun.co.jp/

このキャンペーンはジュンのブランディングが目的。ジュンが掲げている「ソーシャルスタイル」という理念がありますが、今後どのようにジュンが社会と関わり、アプローチしていくべきかを先ほど紹介した4つの仕事を組み合わせて経営陣とコミュニケーションデザインを行いました。

キャンペーンができるまでの大きな流れは、全体設計→PR戦略→情報発信→販促です。

まずは、プロモーション担当が中心となって企画の全体戦略設計し、様々な角度からの調査や、過去の資料を振り返ります。この軸作りは非常に重要で、経営陣含め、コミュニケーション全員でディスカッションを行います。ここで、後ほど詳しく説明しますが、「文化が一人一人を作っていく」という仮説を立てました。

その後、どの媒体にどう仕掛けるのかの選定し、プレスリリースの作成を行います。消費者に発信する前に媒体に事前働きかけることで土壌を作っていきます。

次に情報発信として、テレビCMや広告、テレビ、ラジオ、看板などに情報発信しつつ、自らのオウンドメディア、SNS、イベントなどで拡散。例えばイベントでは、参加型のカルチャースクールなども運営しています。販促の分野では、「YOU ARE CULTURE.」をプリントしたステッカー、ショッパー、ノベルティーなど店頭の販促物にも取り組みを広げていきました。

 

課題から導き出した「YOU ARE CULTURE.」

久保さん:一番重要な“軸”作りのために、まずは「ジュンが持つ課題ってなんだろう?」を掘り下げました。今の市場は二極化しており、高価な物をニッチに売るか、安価な物を大量に売るかのどちらかになっていて、ジュンが主力としていた中価格帯は落ち込んでいます。なおかつファッションへの憧れが以前よりも少なくなり、消費も冷え込んでいます。

この課題を克服するためには、みんなが憧れるストーリーが必要ですし、“かっこよくて、なおかつ売れる”ことを「目指したい姿」に設定しました。そのために、ジュンは社会全体の文化度を成熟させて良い提案をしたい、ジュンがそれを目指すことで業界全体の活性化、社会貢献にも通じるのではないかと結論づけたのです。

ここから導き出されたのが、「YOU ARE CULTURE.」。“皆一人ひとりがカルチャーである”というストーリーを描き、コミュニケーションデザインの軸にしました。それは、かつて私が感銘をうけた「おいしい生活」のように、消費することが豊かな文化を創るということではなく、一歩進んで、文化を消費することが大切という考え方です。私たちが考える文化とは、伝統と革新の両方を併せ持ち、普遍的なものです。この文化を発信することがジュンのブランディングにつながると考えています。 

少し話がそれますが、ブランディングとマーケティングの違いを説明します。
マーケティングとは売るために、自らが発信者となりますが、ブランディングとは自分で宣伝するのではなく、相手が何かの情報を得て、自然にイメージしてもらう状態を作ることです。ブランディングが上手な企業の例だと、ナイキ、スターバックス、アップルなどがありますね。説明を聞かなくてもロゴや商品を見ただけで「信頼」がある。ブランディングの魅力は「消費者にとって生活を豊かにしてくれる、人に伝えたくなる存在にする」ことだと私は感じています。

 

プレスを目指す学生へのメッセージ

久保さん:プレスは、物を売るための存在だけではなく、”とてもクリエイティブで世の中の社会を良くする大使のような存在”だと思っています。プレスや販促、プロモーションといったコミュニケーションデザインをすることは、社会をデザインすることにつながる。そんな気持ちの人が増えると、ファッションはもっと面白くなるし、社会も面白くなるはずです。 

私の人生を振り返ると、あまり決めつけずに生きてきましたし、流れに乗るのも大事だと考えています。尊敬する「A.P.C」のデザイナー、ジャンも「30歳までは専門的な仕事はしなくていい。人生は長いので、いろんなことをやった方がいい」と言っていました。世界の文化度を上げるためにも、自分の引き出しを大きくしないといけません。
そのためにもいろんなことにアンテナを張って興味を持ち、そこから誰にも負けない、太い幹を持った“T字”の人間を目指しています。
Tの横線は興味の幅、縦の線は、自分の専門分野を深く学ぶことです。
みなさんもいろんな「文化体験」をして、自分を極めていってください。

 

 

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久保さん、貴重なお話ありがとうございました!

次回の「Fashion y」は9月頃を予定しております。

 

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