小売店が知恵絞る「販売員の働きやすさ」とは テクノロジーで作業負担軽減 働き続けられるモチベーション維持も

  • 2019年04月03日更新
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新しいテクノロジーやシステムを、自社の販売員の作業負担軽減に生かすショップが増えています。ファッション関連小売店での慢性的な人手不足を前提に、販売員が接客などに集中できる環境をいかに整えるか。併せてモチベーションを維持できるような働き方を実現するため、各社が知恵を絞っています。

接客時間を増やす

各社の取り組みではICタグの活用による棚卸し業務の効率化が代表的ですが、客注対応やシフト作成などでも見直しが進んでいます。注目のキャッシュレス決済など、今後はレジ回りの業務でも変化がありそうです。

TSIホールディングスグループのアルページュは、18年から業務用の客注アプリを各店舗に導入し始めました。店舗に在庫がない場合、他店に問い合わせることなしにアプリ経由でEC在庫を引き当て、自宅に配送する仕組み。結果、在庫切れによる販売機会ロスを防ぐだけでなく、客注電話、発送、荷受けなどの作業が解消されたことで販売員も「楽になった」と言います。目標通り、18年中に全店への導入が完了した。1月の利用は760件に上る。従来この件数分の客注対応にかかっていた時間を、接客などに充てることができます。

同アプリでの売り上げは接客した販売員や商業施設内の数字として扱うため、「丁寧に接客したけれど結局ECに流れる」といった徒労感はありません。EC在庫の状況を把握しスムーズに案内できるかなど、今後は販売員に求められるスキルも変わってくるでしょう。

ストライプインターナショナルは今年、シフト作成業務のクラウド化、AI(人工知能)活用により店長業務の生産性向上に取り組みます。限られた人員をより適正に配置できれば店の売り上げにもつながるでしょう。

同社は商品供給量の圧縮にも取り組みます。商品の作りすぎ・売れ残りでの値下げや利益低下を防ぐ狙いですが、店に届く商品量が減れば付帯作業も減るため、販売員が店頭に立てる時間は増えるとみます。

実店舗とネットやテクノロジーを融合したニューリテールによる、新たな接客の形も模索されています。バロックジャパンリミテッドは、中国の店舗でニューリテールの実験を進めています。店内での客や商品の動きをデータで把握することで、VMDや接客にも活用。ただし日本に導入する場合はそのままではなく、日本の市場に合った仕組みにする考えです。販売員の経験なども十分に生かします。

販売員個人の発信も

人間がすべき仕事に集中できる環境を作ることはもちろん、働き続けるモチベーションを支えていくことも重要。アダストリアは18年11月に会社として初めての接客ロールプレイング大会を開催し、認定バッジを授与しました。当日のロープレだけでなく、普段の仕事ぶりなども評価したという。

SNSの普及に伴い、ブランドだけでなく販売員個人にファンが付くケースも増えています。バロックジャパンリミテッドは販売員の影響力が大きい企業ですが、昨年スタートした新ブランド「ラグアジェム」も自社コンテストで優勝した元販売員の室原彩夏さんがディレクターを務めています。3月には常設の1号店がルミネエストにオープンします。

アダストリアは18年から、同社のEC上に販売員個人単位でスタイリング画像を掲載できる「スタッフボード」を導入しました。画像の閲覧が商品購入のきっかけになるのに加え、「いつも参考にしています」と店頭で声をかけられるようになったといいます。

給与や労働時間などの待遇改善が重要なのは当然として、気持ちの部分もケアできる会社でないと人材は離れていってしまう。販売はそもそも働く人数が多い職種だからこそ、「頑張ってるね」「ありがとう」といった一人ひとりへのコミュニケーションが救いになる場面もあるはずです。

また、「何のためにこの商品を売るのか」という迷いを抱えたまま販売の最前線に立ち続けることは難しい。企業側は、商品価格を含めて店やブランドの価値を守ることにこれまで以上に力を注ぐべきでしょう。

アルページュは業務用アプリの導入で客注業務を効率化した

(書き手=石井久美子 繊研新聞2019年2月27日付けから)

 

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