【アパレル・ファッション業界の専門記者が解説する業界構造】~スポーツ業界編~

  • 2017年03月01日更新
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
S624x416                            job

スポーツ用品の業界構造を解説します。

スポーツブランドは、ウエア、スニーカーなどが街着としても人気のアイテムになっていますが、ここでは競技用を中心に商品の流通について学びましょう。

 

3層構造と問屋不要論

Q.スポーツ用品業界の流通構造を教えてください。

A.基本はメーカー、卸(問屋)ないしは代理店、小売り3層構造です。小売りは地域密着型のスポーツ専門店とアルペンやゼビオ、「スポーツオーソリティ」のメガスポーツ、ヒマラヤなどの大型スポーツ専門店チェーンに大別されます。

地域密着型は地元の学校体育やクラブ活動との関係が強く、消費者のところに直接出向き、注文をとったりする外商の比率が高い店もあります。大型チェーン店に比べると仕入れる商品量も少ないため、メーカーからすると直接、営業活動するのは効率が悪いので、中間流通の卸や代理店がメーカーの〝販売代行〟機能を持ち、こうした専門店に販売しています。

中小の専門店にとって、卸や代理店は〝仕入れ代行〟業と言えます。複数のメーカーから仕入れた商品を、小口に仕分けて小売店へ配送する物流機能も卸企業の武器です。アディダスは卸企業のエスエスケイやゼットなどを代理店にしています。エスエスケイは「ナイキ」や「プーマ」の代理店でもあります。

一方、大型チェーン店が台頭したのは90年代です。米国のスポーツオーソリティが1996年に日本1号店を出し、日本でも大型チェーン店が増えていきました。大型店は中間流通のコストを抑制するため、メーカーに商品を直接発注する場合が多く、卸企業は流通の〝中抜き〟に直面、〝問屋不要論〟も生まれました。

 

高まる大型店の影響力

Q.商品の流通の主導権はどこが握っているのですか。

A.日本のスポーツ用品市場は卸企業主導で成長してきました。卸がメーカーに生産を委託して、小売店に販売する形です。それが、64年の東京オリンピックを契機に自らブランド戦略に乗り出すメーカーが相次ぎ、規模が大きくなるにつれ、主導権はメーカーに移っていきました。アシックスやミズノ、デサント、ゴールドウインなどが国内メーカー代表です。

90年代に入ると、大型の小売店の中に、規模でメーカーや卸を上回るところが出てきました。自らの販売力と大量仕入れを武器に、影響力も高まりました。アルペンは子会社でジャパーナやキスマークジャパンなどのメーカー機能を持っています。冒頭に見た3層構造は大きく変化していると言えます。

とはいえ、いまでも存在感のある地域密着型専門店は多く、そうした小売店に卸企業は不可欠です。大型店も、コンビニエンスストア以上の品揃えといわれるスポーツ関連商品のすべてをメーカーと直接取引するのは効率が悪いため、商品によっては卸企業と取引しています。

 

事業領域を拡大

Q.今後の市場の成長性は。

A.矢野経済研究所の調べでは13年のスポーツ用品市場は推計で1兆3000億円台。スキー・スノーボードでみると、参加人口は93年のピークで1860万人。それが3年前の12年は790万人。東京マラソンなどの都市型マラソン大会の定着とランニングブーム、数年前の〝山ガール〟に代表されるアウトドアブームなどはありますが、90年代に比べ、全体では縮小しています。20年の東京オリンピックなど話題は多いですが、従来型の市場は〝成熟〟期といえます。少子高齢化の影響も無視できません。


半面、健康関連やライフスタイル市場に事業領域を広げ、新たな成長を目指す動きも活発化しています。スポーツ事業で培ってきた知見を応用できるからです。アシックスは昨年9月、機能訓練に特化したデイサービス施設を兵庫県西宮市に開設しました。ミズノも直営のスポーツ施設で介護予防の教室を開講し、デサントも介護予防事業を手掛けています。介護予防にとどまらず、健康産業としてみればスポーツ用品市場の裾野は広い。スニーカーをみても、日常で使用できるスポーツシューズやアパレルはライフスタイル市場での成長性も見込めます。

 

海外市場へも広がる可能性

Q.市場のグローバル化は。

A.スポーツ用品市場は日本の流通の中でも比較的早くからグローバル化が進みました。ナイキは93年に日本の合弁販売会社を100%出資に切り替え、アディダスもデサントとのライセンス契約を98年に打ち切り、日本へ直接進出しました。

一方で、ナイキやアディダスも加盟している世界スポーツ用品工業連盟(本部スイス)の歴代会長職にはアシックス創業者の故鬼塚喜八郎氏や現社長の尾山基氏、ミズノの水野正人会長が就いたこともあります。市場は国内だけではありません。

アシックスは売り上げの7割以上、ミズノは3割、デサントもほぼ5割が海外の売り上げです。欧米にとどまらず、アジアなど新興国のスポーツ熱は高まっており、グローバル市場の成長性は高いでしょう。

 

    関連する記事

    この記事に関連するキーワード

    話題のキーワードキーワード一覧

    月間ランキング月間アクセスランキング

    週間ランキング週間アクセスランキング